【21st Century Snapshotman 】追憶の心象風景と追憶のカメラ 横浜・菊名/Contax RTS 2017.11.06


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Contax Aria Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford FP4 Plus


初めて横浜の菊名あたりを歩いた。都内の東急沿線に住んでいた子供の頃は、東横線沿線のこのあたりが地の果てであった。海外を含めもっと遠い所も知っていたけれど、自転車で行ける範囲が小学生の日常の世界の全てであった。

当時の多摩川の向こう側は、まだ竹藪生い茂る小高い丘とか仮面ライダーが戦いそうな造成地が点在していて、小学生男子の冒険心をくすぐる土地だった。はっきりとした場所は覚えていないが、横浜に転校していった友だちを訪ねて、悪ガキ4〜5人で品川区から歩きだったか自転車だったか、この港北区あたりに行ったことがある。途中、第三京浜に阻まれて、目指す「前ちゃん」の家はすぐその向こうだと、そのまま防音壁を乗り越えて高速道路を強行突破した。ルール違反に極めて不寛容な今の時代なら、ニュース沙汰になっていたかもしれない。前ちゃんはとても驚き、喜んで、庭でツクシを採ったり、造成地の山を登ったり、東京の僕らの地元ではできない遊びをした。前ちゃんのお母さんが心配していたような記憶はあるが、不思議と帰り道はどうやって帰ったか全く覚えていない。

そんな冒険譚の記憶が心の片隅にまだ残っていて、少しワクワクしながらこの町を歩いた(前ちゃんの家が菊名だったかは分からない。多分違う)。とはいえ、平日の真っ昼間の閑静な住宅街である。気候も極めて穏やか。追憶は穏やかさの中に静かに包み込まれていった。

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Contax Aria Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 18mm F4 Ilford FP4 Plus


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Contax Aria Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford FP4 Plus


僕はもともとはコンタックスユーザーだったが、10年弱前に一旦フィルムを辞めた際に全てのコンタックス機材(結構な数を揃えていた)を売り払ってしまった。そこから、2年前にモノクロフィルムに限定して銀塩を再開し、友人から一部買い戻したりもらったり買い足したりして、以前ほどの充実度ではないがコンタックスシステムも復活している。今の自分と以前の自分が求めるものと買えるものは少し違うので、以前は持っていなかったレンズを選んだり、持っていたレンズをあえて揃えなかったりしている。例えば、P85mm1.4とD35mm1.4という巨砲を以前はMMGで揃えるこだわりを持っていたが、今は共にスルー。代わりにMP100/2.8とD18/4の2本は、ソニーEマウント用も考えて今回の出戻りで初所有している。

出戻りのボディは人にもらったAriaと以前自分が所有していたS2を買い戻してこの2台でしばらく回していたが、今回の撮影の直前に初代RTSを買い足した。これは、実用を考えてというよりノスタルジーを満たすための買い物だ。高校生の頃に初めて自分で買ったカメラが、ボロボロの中古のRTSだった。当時ヨドバシカメラの地下にあった小さな中古売り場の棚にあったのを、しばらく羨望の眼差しで眺めていた。ボディについていたP50mm1.4のT*コーティングの輝きと、ポルシェデザインの流麗なボディをなんとしても自分のものにしたかったのだ。そして、ついに手にしてからは、毎日学校へ持っていって行き帰りや校内で写真を撮りまくった。それが僕の写真の原点だ。

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Contax RTS Carl Zeiss Sonnar 180mm F2.8 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 18mm F4 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 25mm F2.8 Ilford FP4 Plus


ところがそのRTS、大学生になってから東北・北海道旅行の途中で電車に置き忘れてなくしてしまった。その後、就職した新聞社の初ボーナスででレンジファインダー機のG2を買ったものの、コンタックス一眼レフ復帰はそれから10年ほど経ってから新聞社写真部の先輩にRTSIIIを借りて東京とベルリンのストリート・スナップを撮り、気に入って自分のものを買うまでは果たせなかった。

そんな経緯から、初代RTSは、甘い思い出と苦い思い出が入り混じった自分の若気の至りの象徴である。過去を振り返る年齢になり、フィルムカメラが安く手に入るようになった今、どうしても手元に呼び戻したい一台だった。

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RTSは初期の電気カメラなので、ちょっとしたことで修理不能になりやすいかもしれない。逆に今がこのカメラを実戦で使うラストチャンスとも言える。ともかく、やはりRTSをリベンジして良かったと思う。フェザータッチのシャッターといいシャリッと気持ちよく巻き上がるレバーといい、このカメラで撮影をしているだけで、当時の感動と写真への純粋な情熱が蘇るようだ。

僕はいつも2台持ちで街頭スナップするので、今回もRTSをレンズ交換しながら、サブにはP50固定のアリアを使った。期せずして、ヤシコン一眼レフの1号機と最終モデル(Nシリーズを除く)の共演となった。

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Contax Aria Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 18mm F4 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 25mm F2.8 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 25mm F2.8 Ilford FP4 Plus


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Rollei A26 Ilford Delta 400



速射性に勝る一眼レフは「人」が被写体になりやすい繁華街でガシガシと使い、こういう静的な被写体が多い住宅地はライカでスッと空気を切る方がいいかもしれない。でも、RTSのフェザータッチは、ニコンF3のカシン!というカッチリさやキャノンA1のバチン!としたエレクトリックな感じや、ニコンFM2のパコン!という金属的なシャッターよりも、ライカとは違う趣きではあるが、人がいない空気感を静かに切り取るのに合っている。

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Contax RTS Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 25mm F2.8 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 25mm F2.8 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 25mm F2.8 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Sonnar 180mm F2.8 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 18mm F4 Ilford FP4 Plus


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Contax Aria Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford FP4 Plus


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Contax Aria Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford FP4 Plus


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Contax RTS Carl Zeiss Distagon 25mm F2.8 Ilford FP4 Plus


   




第2回プラチナブロガーコンテスト



by hoq2 | 2018-02-02 23:28 | 写真(Street Snap) | Trackback | Comments(0)