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【Nagano Snapshot 】幻の川上犬に会いに(一眼レフの復権) 長野県川上村(2017 6/5)


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田舎に住んでいると、どうしても車の生活になる。特に山ばかりの信州では、平坦な道が少なく、自転車も厳しい。過疎化ととも公共交通機関もどんどん縮小している。特に僕のような移住者は市街地を避けて山の中に住んでいるので、そもそも最寄りのバス停まで歩くだけでちょっとした山歩きになってしまう。

そんなわけで、東京に仕事へ行く時以外は、ほとんど鉄道に乗る機会はないのだが、今回はたまたま車がなくて、実家から自宅への移動に小海線を使った。実家といっても、親がリタイアしてから移り住んだ家なので、生まれ育った土地ではない。だから、小海線に乗るのも初めてである。遠くから乗りにくるほど、さわやかな高原の旅を味わえる風情列車だと聞く。だから、せっかくなので旅行気分で途中下車することにした。行き先は、犬好きとして前々から気になっていた川上村に決定。川上犬という天然記念物の日本犬の故郷である。

実際に川上犬に会えるかは分からない。どうすれば会えるのか、あえて調べなかった。ともかくは最寄りの岩村田駅(佐久市)から川上村の入口、信濃川上駅を目指す。

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僕はこの手の一人旅をする時は、あえて情報をあまり調べないで行く。情報過多な現代においては特に、少し意識して情報を遠ざけないと冒険的な要素や偶然の出会いのチャンスが減ってしまうと思うからだ。「旅情」とは、見知らぬ土地で、悪く言えば騙される、良く言えば夢を見ることから生まれる。それには、多すぎる情報は邪魔である。実感としても、素で旅情が楽しめたのはネットがない時代までだった。

信濃川上駅から、ともかく村の中心部を目指す。地図を見ると、役場があるあたりは駅から結構離れている。

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山梨県と埼玉県と接する三角地帯の辺鄙な場所にある川上村は、大変に静かな土地である。僕が移住した同じ八ヶ岳山麓の蓼科ともだいぶ趣きが異なり、村を取り囲む山々は「おにぎり山」のような三角のかわいい山が多い。秩父っぽさも見え隠れし、山岳地帯と里山地域の中間のような趣きである。ただし、関東の田舎と決定的に違うのは冷涼な気候で、そのため高原野菜の代表であるレタスの一大産地となっている。村民のほとんどがレタス作りに関わっているのではないかと思うくらい、レタス畑に囲まれている。東南アジアからきた農業実習生を多く見かけたのは、今の時代らしい光景であった。

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さて、昨年の4月から銀塩モノクロ自家現像の街頭スナップを再開したのだが、この一年間の大半は、ライカM6TTLとミノルタCLEで撮ってきた。そもそもの出戻りのきっかけが、M6TTLをもらったことだったのもあるが、「人のいないスナップ」を撮るには、「レンジファインダー機・マニュアル露出」が適していると思ったからだ。そのため、AEモードがあるCLEも、ほとんどマニュアルでしか使ったことがない。CLEをわざわざ新たに買ったのは、M6TTL(0.85)とセットでもらったコシナ・ビオゴンの28mmを使う適切な28mmファインダー枠搭載機が欲しかったからだ。

少し話が変わるが、「東京の街頭スナップ」が高校時代からの僕のプライベートな作品撮りのライフワークだ。その大半をモノクロフィルムの自家現像でやってきた。デジタル時代に入ってそれにいったん区切りをつけようと出した写真集が、下のリンクの『Berlin + Tokyo』だ。



『Berlin + Tokyo』では、ベルリンで写真展もやらせてもらい、以降は仕事もプライベートもデジタルに完全以降した。生活の余裕があるわけでもなかったので、その時に思い切って主なフィルムカメラと暗室機材は全部売ってしまった。今はあるのはもらいものとかジャンク再生品とか買い直した中古品などの寄せ集めだ。フィルムスキャナーだけはまだ仕事や過去作品の整理に必要だったので手元に残し、それが今おおいに再活躍しているのだが。

それはともかく、『Berlin + Tokyo』を含め、都会の街頭スナップの大半を僕は「一眼レフ・絞り優先AE」で長年撮っていた。もちろん、夜間スナップや街頭スナップ以外の作品撮り、仕事写真ではマニュアル露出も使っていた。また、35mm一眼レフばかりでなく、コンタックスG2という“AFレンジファインダー機”をサブに使ったり、ハッセルのVシリーズやNewマミヤ6などの中判にも手を出していた。とはいえ、いずれにせよ、僕にとって「一眼レフ・絞り優先AE」が最も直感的に街頭スナップできる手段なのは今も変わらない。

でも、再開後は、とにかく一年は「ライカ(レンジファインダー・マニュアル露出)でのスナップを続けようと頑張った。その理由の一つは、再開前はずっと避けていたライカの習熟のため。もう一つは、「空気感」を重視した作風に少し寄せようと思ったからだ。以前は東京やベルリンでひっきりなしに出会う通行人を絡めたタイミング重視の脊髄反射的な作風だったが、今は田舎に住んでいるので「人のいない街頭スナップ」が撮れないことにはどうにもならない。また、引き続き東京も撮ってはいるが、年齢と経験を重ね、撮影対象や社会情勢が変わってきた今、「人のいない街頭スナップ」の習得とともに「人がいる大都会」での作風も少し変えようと思った。その手段の一つとして、「レンジファインダー機・マニュアル露出」が適していると考えたのだ。

とは言っても、一眼レフを完全に捨てたわけではない。レンジファインダー・マニュアル露出」を一年余り続け、ある程度の手応えを得た。昔のスタイルに寄せた今の自分の新しい写真にも、そろそろチャレンジすべき時期だ。そんな思いから、今回は一眼レフに復帰する準備段階として、コンタックスAria(メイン)、EOSkiss7(サブ)という、新しめの銀塩一眼レフ2台を持ち出した。いずれも貰いもの&実家で使われなくなってしまい込まれていたカメラである。

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僕が一眼レフ、レンジファインダーに関わらず35mm判の2台体制にこだわるのは、一つの見方にこだわるよりも、あらゆる視点から物事をとらえるたがるタイプの人間だからだ。そういうポリシーだからというより、生い立ちや職歴に自然と影響されて、完全にクセのように染み付いている。レンズの選び方も木村伊兵衛的な「コダワリの50mm」みたいなのに憧れはするのだが、「それは自分じゃないよな」という感じである。だから、街頭スナップでも、可能な限り20mm〜200mmのレンズを素早く使えるよう、2台+5本くらいのセットで歩いている。その際、素早くレンズ交換するためにカメラバッグは持たない。レンズポーチとハーネスベルトを活用している。

ボディとレンズの組み合わせについては、これまではG2を使う時以外は、ニコンならニコンでマウントを揃え、広角はこっち、標準と望遠側はこっち、というような分け方をしていた。それを今回から変えることにした。サブカメラの方は35mmか50mmの固定(もしくは使用頻度の低いもう1本をプラス)で、いつでも万能的にシャッターチャンスに対応するために確保しておく。メイン機は、それ以外の画角で比較的時間をかけて撮る用とする。そのため、マウントの統一は必須ではない。空気感重視の今の作風とシャッターチャンス重視の以前の作風をうまく融合させるために、このスタイルを考えてみた。これは応用的にライカと一眼レフの組み合わせなどでも使えるはずだ。

それに基づいた今回の構成は以下の通り。
(メイン)コンタックスAria ・・・Distagon18mmF4  Distagon25mmF2.8 Planar50mmF1.4 Sonnar180mmF2.8
(サブ)EOSkiss7・・・シグマ35mmF1.4art(Canon EF) EF135mmF2.8(soft focus)

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さて、問題の川上犬であるが、駅から2時間余り歩いて中学校や駐在所がある中心部的な集落に着いたものの、姿はなかった。役場はもっと先にあることが分かったので、先に進みつつとりあえず昼食がとれる所を探すも、街道沿いの食堂は閉まっていた。コンビニがある気配もない。これは田舎では珍しいどころか普通のことだ。スーパーを見つけるとこれが唯一の店舗の可能性もあるので、迷わず入った。なかなか立派なスーパーで中に食事コーナーもあったが、やはり当然のごとく閉まっていたので、店内でとても安い弁当を買った。ここで川上村に来て初めて大勢の人に会ったが、店員さん以外はお年寄りと農業実習生の外国人ばかりであった。近未来の日本の田舎はどこもこういう感じになるんだろうなあ、と思いつつ、役場方面に向かう。

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カメラの話に戻すと、都会の街頭スナップでのシャッターチャンスの強化のために一眼レフ復帰を画策しているのに、そのテストの場に何も過疎地の村を選ぶ必要がないじゃないかという声が聞こえてきそうである。自分もそう思う。この村はライカでスマートに撮った方が良かったかな、という思いもかすめたのだが、下のワンコの2枚は、一眼レフでしか撮れなかったと思う。1枚目の犬だけのカットは、河原に犬を見つけて、すぐにAriaに180mmを装着してAEで素早く撮ったもの。この後犬はすぐに茂みの影に消えた。しばらく歩くと、飼い主と一緒にまたこの犬と出会ったので、今度はそのおじいさんと話をした。そして、この犬がラブとコーギーのミックスであること、川上犬は「役場の方へ歩いて行って、庭先から吠えてくるのはみんな川上犬」であることと、一般公開されている犬舎が役場の隣にあることが分かった。その間、犬とワチャワチャやりつつ、2枚目を撮ったわけだが、とっさに万能に使えるサブ機(Eoskiss7 + 35mm)があったこらこそ撮れた1枚だ。

冒頭の方で、あえて事前に情報を調べなかったと書いたが、そのおかげで、こういう出会いを持てたのだとも思う。

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そしてたどり着いた川上犬の犬舎。もっと柴犬の亜種のようなイメージを持っていたのだけど、全然違う。日本オオカミってこんなだったのかな、というような野性的で素敵な犬だった。でも、眼差しがかわいらしいのは、まごうことなき「犬」である。

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帰りは役場の近くのバス停から路線バスで駅に戻ることに。待ち時間に裏の河川敷をブラブラ。

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最後にもう一つ、川上村で発見したもの。レタスと川上犬の村ということで、公式マスコットの『レタ助』。字は違うけど、同じ「スケ」者として、非常に好感度の高いキャラである。写真は、マメを連れて再訪した時のもの。川上犬舎がある施設では、ランドリーとのコラボTシャツなど、レタ助グッズも売っている。

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【使用機材】
・Contax Aria
・Contax Carl Zeiss Biogon 18mmF4 MMJ
・Contax Carl Zeiss Distagon 25mmF2.8 MMJ
・Contax Carl Zeiss Planar 50mmF1.4 MMJ
・Contax Carl Zeiss Sonnar 180mmF2.8 MMJ

・Canon EOS Kiss7
・Sigma 35mmF1.4 art (Canon EF)
・Canon EF 135mmF2.8 with soft focus


     
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by hoq2 | 2017-08-04 23:31 | 写真(Naganao snapshot) | Trackback | Comments(0)

(フォトジャーナリスト・内村コースケ)写真と犬を愛するフォトジャーナリストによる写真と犬の話。写真は真実の写し鏡ではなく、写像である。だからこそ面白い。


by hoq2
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