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サクラチル 等々力渓谷 - ゴミの日の朝に 

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その朝は、資源ごみの日だったようで、春の強風の中をダンボールやらプラスチック屑やらが舞っていた。デジタルカラーでスナップしながら、九品仏の恩人宅から等々力渓谷を目指す。桜散る4月の土曜日。

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友だちの家に泊まった休日の朝は、たいてい晴れていて気だるい。夜遅くまで話をしていたりして、肉体的に疲れていて寝ぼけているのもそうだが、友人宅を辞して1人になった時のふっと気が抜けたような精神状態が余計にそう感じさせるのかもしれない。この「気だるい朝」を迎えた時に何度か街頭スナップを撮ったことがあるが、今回は多分、20年ぶりくらいにその機会が訪れた。この世田谷の南の外れのエリアは、写真を始めた頃と重なる高校1、2年の短い期間に住んでいた場所でもある。その時代を懐かしむ気分も抱えながらの2時間余りの散歩となった。

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二子玉川から多摩川沿いに20分以上歩いた所に住んでいた高校生当時、ぼんやりと部屋の天井の片隅を眺めながら、にわかに写真こそが一生を賭けてやりたいことだと気づいた。長々と語れる理由はなくはないが、それ以上に直感的なものだと言った方がいい。周りは10代特有の勘違い、思いつき、中二病だと生暖かく見守っていたようだが、きっちり30年後の今、このエリアを訪れて当時と変わらない街頭スナップを撮っていることが、その時の直感が間違っていなかったことの何よりもの証明である。

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今回は、2台のボディ(EOS5DMarkIV、α7II)と2本のズーム(Sigma12-24mmF4art、Sony70-200mmF4)と2本の単焦点(Sigma35mmF1.4art、Sigma50mmF1.4art)で、12mmから200mmまでの画角を網羅して撮影している。新聞社のカメラマン出身の僕にとっては、報道カメラマンの基本のボディ2台持ちは全く苦にならない。そのうえで、街頭スナップで持ち歩けるレンズはボディに1本ずつつ+3本の計5本までであろうと思っている。

30年前の自分は、まずタンスの奥にあった父のキャノンFT+50mm&135mmで練習して(本当に自分は写真をやりたいのか確認して)から、二子玉川のカメラのきむら(キタムラではない)で安売りしていたペンタックスMEスーパー+50mm+タムロンの望遠ズームのセットを買って本格的に写真を始めた。そして、奈良原一高とかブレッソン、木村伊兵衛といった人たちを手本に、いわゆる芸術写真を志向した。その界隈では、今も昔も「ライカに50mmか35mm1本」で勝負するとか、ローライ35、コニカ・ビッグミニ、リコーGRなどの「よく写るコンパクトカメラ」一台で撮るとか、ともかくそういうレンズ交換なしの「一本勝負」を良しとする傾向がある。その中にいながら、僕はそこには全くこだわっていない。

ある「画家」を名乗る人物が、僕にこう言ったことがある。「私は女の人の顔しか描けないから、それだけを描く」。確かにその人は人や動物の顔ばかり描いていた。体や手がついている絵も少しはあったが、それは確かにご本人の言う通りのモノであった。さらに言えば得意だという「女の人の顔」も、失礼ながら素人目にも玄人目にも画家を名乗るレベルには達していないのは確かであった。それらの絵が表に出る要素は、絵そのもの以外の所にあって、それ故に痛々しくて見ていられなかった。自分の得意分野に集中して一点突破で作品を作ることは素敵なことだと思う。しかし、「描けない」のと「描かない」のは全く次元の違う話だ。今さら僕などが言うことではないが、あらゆるモチーフを並以上に描けたうえでなければ、誰にも負けない一点突破の得意分野も成立し得ない。これは、写真を含むあらゆることに通じる。もちろん、趣味や気晴らしとして楽しむのなら話は別である。その場合は楽しく好きなようにやるのが一番だ。

レンズの話に戻る。色々なレンズで撮ってきてそれなりの作品を残してきたうえで「一本勝負」をするのと、はなからチャレンジすらしない「一本勝負」はわけが違う。確かにライカM3に沈胴式エルマーかなんかでチャチャッと撮るのはスマートだ。でも、重厚長大な機材を抱えて写真を撮ることを恥ずかしがる必要はない。野暮ったいことを恥ずかしがる方が恥ずかしい。僕は、一本勝負もする(【21st Century Snapshot Man】2016 5/5 伊那・飯田 ぶらり各駅停車ズマロンの旅(前編/伊那)【21st Century Snapshot Man】2016 5/5 伊那・飯田 ぶらり各駅停車ズマロンの旅(後編/飯田 )し、今回のようなあらゆる画角を用意して街歩きをすることもある。どちらも、それぞれの良さがあるが、いつまでも視野を広く持っていたいということだけは強く思っている。そのうえでなければ、得意分野やこだわるべき画角など習得できないであろう。

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写真を始めた当時、最初に写真仲間になったのが尾山台に住んでいた同級生だった。二子玉川の先の僕のマンションと彼の古い大きな一軒家を自転車でお互いに行き来して、写真を見せ合ったりカメラの話をした。その道中に等々力渓谷があるのだが、不思議なことに渓谷を渡る「ゴルフ橋」は何度も通ったが、渓谷に降りた記憶がない。自分でもまさかとは思うが、2017年4月のこの日が等々力渓谷の初見である可能性が高い。

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渓谷を抜け、尾山台の高台に戻っておぼろげな記憶を頼りに友人宅を探してみることにした。古いがなかなか立派な木造の平屋建てで、友人の部屋の窓から近くの名門女子高の校舎や多摩川が見下ろせた。その借景のある家を探したのだが、記憶にあるその風景はあったものの、家が一致しない。それらしき一角に更地が一区画あったので、もしかしたらそこだったのかもしれないと思いながら、撮影を終えた。ふいに、その友人宅でお母さんがとってくれたカツ丼大盛りの味を思い出し、昼食は尾山台駅前の蕎麦屋でカツ丼にした。

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【使用機材】
・Canon EOS 5D MarkIV
・Sigma 12-24mm F4 art
・Sigma 35mm F1.4 art
・Sigma 50mm F1.4 art
・Sony α7II
・Sony FE 70-200mm F4


     
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by hoq2 | 2017-05-09 00:08 | 写真(Street Snap) | Trackback | Comments(0)

(フォトジャーナリスト・内村コースケ)写真と犬を愛するフォトジャーナリストによる写真と犬の話。写真は真実の写し鏡ではなく、写像である。だからこそ面白い。


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