【21st Century Snapshot Man】2016 10/14 御徒町ー蔵前ー両国(佐竹商店街)
2016年 12月 30日
今年の春にモノクロフィルムの街頭スナップを再開して以来、撮ったフィルムはすぐに現像してデータ化、このブログにアップするということを心がけてきたが、秋ぐらいから忙しくなってきて、年末の今、10月撮影分をようやくUPしている。ごく私的な作品なので、別にいつUPしようがしまいが、人にとってはどうでも良いことだ。とはいえ、「撮ってすぐ現像・UP」には自分なりの大きな根拠がある。
僕は今の時代にあえて手間のかかるフィルム撮影をするにあたって、とにもかくにも継続することが大事だと思っている。デジタル撮影という目の前の楽な道に行くのはとても簡単だ。未現像フィルムがどんどんたまるような状況になれば、面倒なフィルム撮影なんてすぐに辞めてしまうだろう。趣味のフィルム撮影には、生業にしているデジタル撮影の質を高めるための基礎トレーニングの意味もある。よくあるパターンで、いつの間にかフェードアウトするようにフィルム撮影を辞めたくない。だから、「無理なく継続できる」やり方で進めることが大切だ。一言で言えば「未現像フィルムが溜まらないくらいのペースで撮る」。今回の街歩き分も、どうにか年内に収めることができ、ギリギリセーフというところだろうか(まだ1回分の現像済みフィルムとさらに1回分の未現像フィルムが残っているのだが・・・)。
今回は御徒町駅前から佐竹商店街を経て蔵前橋を渡り、両国(森下)までの下町歩きである。僕は今、東京を脱出して長野県・蓼科で山暮らしをしているが、「心の故郷」はやはり育った東京である。幼稚園から小学校あたりを過ごした品川・目黒区あたりが地元だと認識しているのだが、10代〜30代の約3分の2を過ごした下町方面が、今も最も落ち着いた気分で歩くことができる。最近は、蓼科から近い多摩方面や練馬あたりもよく行くようになり、そっちはそっちで非常に楽しく歩いているのだが、アウェー感や新鮮な小旅行気分が勝る。その点、そっちではデジタル・カラーでの撮影が多めになっている。モノクロフィルムやるならやっぱり下町、なのである。
さて、御徒町から東へ、隅田川に向かって10分ほど歩くと佐竹商店街がある。都内では比較的珍しい昭和タイプのアーケードつきの商店街で、小規模なところがまたノスタルジーを誘うので、ついよくフラッと立ち寄ってしまう。自分が小学校高学年の1stガンダム放映時に過ごしたのが、“東洋一”のアーケード商店街がある武蔵小山なのも、この通りに引き寄せられる理由だろう。テレ東の『Youは何しに日本へ』で、アメリカ人青年がスペース・インベーダーを探す旅で、この佐竹商店街の喫茶店に立ち寄った(番組中では定休日で確認できず)のだが、そのことが、この街が1970年代末〜1980年代初めの面影を残すことを証明していた。
今回の撮影機材はコンタックスS2+プラナー50mm1.4とミノルタCLE+ビオゴン28mm2.8の2台体制。フィルムは、いつもより浅めの被写界深度を使いたい気分だったので、IlfordFP4をノーマルのISO125で使っている。若い頃は、フジのネオパンSSと400プレスト、その後はコダック派になりTri-XとPlus-X、後期はT-MAXの400と100を常用していたが、フィルム再開後は、イルフォードのHP5PlusとFP4Plusを使っている。この2本は、Tri-X・Plus-Xの同等品である。コダックをやめたのは、Tri-XやT-MAXはまだ手に入るものの割高なのが一つ。そして、年齢を重ねるうちに、コダックのドライなイメージよりも、しっとりとしたイルフォードの表現が意図に合うようになったからだ。フジの現行のアクロスは使ったことがないが、若い頃はプレストのしっとり感が好きになれなくて、コダックに鞍替えした。今はその逆を行っているのが、自分でも面白い。
それから、夏頃から自分のモノクロフィルム街頭スナップのアイデンティティとして紛れ込ませている「ましかく写真」(インスタマチック=126フィルム=35mmスクエアフォーマット)用のローライA26を、今回も使った。2台体制もとい、3台体制である。
もう一つ、今回から今まで各写真の下につけていた使用カメラとレンズ、フィルムの表記を廃止した。もともと、作品を純粋に見てもらうには余計な情報であるのは十分承知していたのだが、試行錯誤する中での忘備録的な意味合いもあって、あえてつけていた。銀塩再開後の技術面・機材面の試行錯誤の結果がある程度固まってきたのに伴い、外したしだいである。ただし、独りよがりの芸術性なんかよりも機材面に興味を持ってアクセスしてくれる人が多いのも現実であり(決して皮肉ではなく、そこに関心を持ってくれることも素直に嬉しい)、末尾にまとめて使用機材を掲載することにした。
蔵前から隅田川を渡り、両国から森下に出て今回の撮影は終了。3時間ほど歩いて36枚撮り2本と126詰め替えフィルム1本未満というところに撮影のペースが落ち着いてきたようだ。ほかに、画像調整のテクニックも着地点が見えてきた。ハードロックとかプログレのバンドが、新曲をライブなどで試演する際、後のスタジオレコーディングよりも荒々しく派手に演奏することが良くあったが、この銀塩再開後の【21st Century Snapshot Man】も、そんな感じで進めてきた。自分では、今回から半年前の写真よりも落ち着いたトーンになっていると思うのだが、いかがでしょう?細かすぎて伝わらないか。
【使用機材】
・コンタックスS2
・コンタックス プラナー50mmF1.4
・ミノルタCLE
・カールツァイス ビオゴン28mmF2.8
・ローライA26