【21st Century Snapshot Man】2016 5/21 武蔵小山 ダムの底に沈むムラ


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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm f2.8 Ilford HP5+

小学校の後半を、東京・品川区の小山台という所で過ごした。目黒区の中に突き刺さったような小さな半島のような、品川区の盲腸のような所で、それはおそらく旧農林試験場と国家公務員住宅という国有地がその半分近くを占めるからであろう。試験場は今は「林試の森公園」という都立の公園になっている。そして、官僚だった父の転勤で海外と東京を行ったり来たりしていた僕は、1970年代末から80年代初頭にかけて、「農林」の脇にある6棟の団地型の高層住宅がある公務員住宅に住んでいた。小学校の児童は周辺の住宅地の地元民と公務員住宅の子どもたちの混成で、あまりに当たり前の場所だったので、僕らは公務員住宅を単に「住宅」と呼んでいた。

その「住宅」が今、取り壊されようとしている。今も近くに住んでいる「住宅」出身の幼馴染は、「生まれ育った村がダムの底に沈むって、こういうことか」と言った。

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm f2.8 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

豪華なマンションとはとても言えないカステラ型の団地である。山手線の目黒駅から2駅目の東急目黒線(旧目蒲線)武蔵小山駅から徒歩10分ほど。立地はいいかも知れない。公務員に対する風当たりの強さは今に始まったことではなく、この「住宅」もついに予算削減の名目で廃止・取り壊しが2011年ごろに決まったようである。今は全戸空き家になり、フェンスで仕切られ、建物の入口はベニヤで塞がれ、雑草が生い茂っている。管理する財務省はその後の利用について公表していない。ともかく、都内の一等地に隠然たる様でゴーストタウンが屹立しているのは、一種異様な光景である。だから余計に、具体的な少年時代の思い出が無数に詰まった風景が荒れ果てていくのは、本当に胸が締め付けられるのだ。

そんなことを思ったから、あまり長くこの場に留まるのは辛かった。まだ生きている「懐かしいわが町」に出て、いつものようにノスタルジーを追ってみよう。引っ越しの連続の人生の中で、武蔵小山は数少ない地元と言える町なのだ。それを確かめるように、こうして定期的にこの町を訪れては、写真を撮っている。このブログにも、3年前の訪問時のスナップをUPしている。
大井町-武蔵小山 ノスタル爺空間

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

このあたりは街路が狭く、入り組んでいて、僕が町を出て3、4年後くらいから既に区画整理が始まっていたと思う。そのペースはゆっくりとしていて、今も尚進行中だ。変わったのは、小学校の横のごちゃごちゃとしたエリアに一本太い道路が貫いて谷底の山手通りとつながったこと。「目蒲線」が「目黒線」になり、駅も線路も地中化されたこと。そして、格好の遊び場だった(公式には立ち入り禁止だったのだが)農林の跡地が、きれいに整備された「林試の森公園」になったことだ。

都会の真ん中にポッカリとエアポケットのように佇んでいたミステリアスな森は、僕らの冒険心を最大限に刺激した。忍び込んでは虫取りをしたり守衛と追いかけっこをしたり、エロ本を拾ったりと、なまじの公園などよりずっと楽しい場所だった。「昔は良かった」とはあまり言いたくないが、あえて言おう。やはり昔は良かった。整理整頓されすぎた町は、子供にとっても、いや、大人のストリート・スナッパーにとっても、面白くない。

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Contax S2 Carl Zeiss Planar 50mm f1.4 Ilford HP5+

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+

僕は、武蔵小山の下町然とした庶民的な装いが好きなのだが、最近は便利でオシャレな地域にも近い割に安いと、上京してくる人たちにも人気の町だそうだ。それに合わせて、それなりにオシャレな店もポツポツとあるのだが・・・

気に入らない。ムサコ?そういうセンスはいりません。

とはいえ、実際に住んでいる人にとっては、新住民も住みやすい風通しの良さが必要なのは理解できる。「ダムの底に沈む村」の幼馴染は、住宅の外を含むこの地域全体が「ムラ」だという。特に子育て中の世代にとっては、自分たちが子供の頃やってきたことを今の子供たちも同じように繰り返していることに、時に愕然とするらしい。そのスパイラルから輪廻転生的に抜け出せない相互監視的なムラ社会であると、洞察力のある原住民は感じているようだ。でも、幼馴染の「どうせ俺はこのムラから一生抜けられない」という口調は決して嫌そうではなく、僕だってこの町があの頃の延長線上にあるムラであり続けるのなら、またスッと入っていけそうな気がする。僕らは皆、そういう年齢になったのだ。

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm f2.8 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

僕はその触れ込みには懐疑的だが、武蔵小山の象徴は東洋一長くて日本最古だというアーケード商店街である。今は「武蔵小山パルム」という名前がついているが、原住民の間では単に「商店街」と呼んでいる。今回はこの商店街を抜け、中原街道を渡って隣町の中延にも少し足を踏み入れた。ここにも小規模なアーケード商店街があるが、日曜だというのに静かだった。既存の商店街が全国的に息も絶え絶えの中、武蔵小山商店街は数少ない生き残りの一つなのだろう。地方ではかえって味わえない、古き良き路面の賑わいが、まだ東京には残っている。

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm f2.8 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+

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Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+


       


by hoq2 | 2016-06-14 23:59 | 写真(Street Snap) | Trackback | Comments(0)

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