【21st Century Snapshot Man】2016 5/2 長野・ 善光寺


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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

前回でモノクロフィルム復帰の習作は終わり。モノクロ街頭スナップへの回帰(習作1=長野県茅野市湯川)モノクロ街頭スナップへの回帰(習作2/横浜・鶴見) で書いたやり方で、GW中に3回撮影に臨んだ。

この新シリーズのタイトルは『21st Century Snapshot Man』(21世紀の街頭スナップ男)としておこう。その第1回目は長野・善光寺。長野市内での取材の前に2時間ほど周辺を歩いた。長野市は僕が自宅を構える蓼科山中からは同じ県内と言っても遠い。どの交通機関を使っても八王子あたりに出て行くのとそう変わらないので、わざわざ行く機会は少ない。とは言っても、仕事やらなんやら通算10回くらいは行っているのだが、長野といえば善光寺。2度目のお参りになるが、モノクロの正統派街頭スナップをするのは今回が初めてになる。少し離れた所に車を停め、コンタックスS2とライカM6・レンズ4本という装備多めで街頭にレンズを向けつつ、参道に向かった。

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

僕の感覚では、長野市は県庁所在地としては小さな町である。正直「えっ?これが県庁所在地?」と今でも思っているし、全国ほとんどの県庁所在地には行ったことがあるが、鳥取市あたりに次ぐ“小さな都会”だと思う。実際はどうなのかと今調べたら、47都道府県で人口26位・人口密度38位で真ん中より少し下という位置づけであった。冷静に考えればそんな所だろうな、と思いつつ、例えば前橋と高崎のように大きな町が隣接して地方都市圏を作っているわけではないので、実際よりも田舎に感じられるのかもしれない。とはいえ、僕が普段暮らしている山からおりた所にある諏訪地域の「町」に比べれば間違いなく「街」であり、最近の疲弊した地方の中心市街地の多くのように通行人が全くいないというわけではない。当然、世界的にも有名な観光地である善光寺参道にはいつも人がいる。つまり、通行人を絡めた形の「ストリート・スナップ」がギリギリ成立する舞台であり、同時に「人のいない街頭風景」を切り取るのにもちょうど良い。

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 18mm F4 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 18mm F4 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

昔、ライカ同盟のトークイベントを取材したことがあるが、赤瀬川原平さんが「ペンキ塗りたては撮りにくい」と言っていた。建物や街に転がる物体、さらには人間にしてもある程度風化してその場に定着しないと色気が生まれない。街頭スナップと色気は切り離せない。真新しいものには写欲がわかない。そういう意味だと僕は解釈しているし、実際そうだと思う。自然、僕自身も30年以上は経過した町並みや老人にばかりレンズを向ける傾向は、写真を始めた高校生の頃から変わらない。要は、自分が生きている時代と同時代的なものはつまらない。観光地として成立するのも、極端に新しいか古いか、そんな場所だ。

いや、それを打破しようと、あるいはそうした「意識高い系」の常識に反発していた時期もあった。同時代的な「つまらないもの」を意識してあえて撮ったりということを実際にしばらくやってもみた。しかし、今、また元の場所に帰ってきた。何かを否定するからには、最低限それを経験してからすべきである。否定するものこそ、自分のものになるまで反復練習しなければならない。その過程をしっかり踏まえていなければ、今帰ってきた場所が以前よりも奥行きが深い場所となることはないだろう。

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Contax S2 Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford HP5 Plus

この長野市に限らず、地方都市にはまだまだ色気のある風景がたくさん残っている。しかし、古い建物の多くは空き家になっていたりして、朽ち果てようとしている。廃墟ということになれば、それは死んでいるので、「色気のある風景」とはまた別物である。だから、古いもの、少なくとも昭和の名残がまだ生きているうちに撮っておきたいという焦りはある。まあ、昭和が滅べばまた新しい写欲を掻き立てるものが必ず出てくるので、そう心配することもないのだが。

反対に、10年20年前にあれほど面白がって撮っていた東京は、今はつまらない街になってしまった。「夜中の無人の街にすら人気(ひとけ)がある」というヨーロッパあたりの街にはない活気が、完全に失せてしまったように思う。さらには、アナログ的な、街並みの表に出てきているものが形骸化している。これは東京だけの問題ではなく、バーチャルな世界の広がりと共に、世界中でリアルな「都市」という概念そのものが再構築の最中だとも言えよう。それが定着して熟すのにあと30年はかかるかなあ。その時に自分はまだ生きていて、写真を撮れるほどの元気さが残っているだろうか。

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

さて、今回は初めてイルフォードのHP5 Plusを本格的に使ったが、粒状性などの基本的な性質はTRI-Xと同等だが、TRI-Xよりも軟調な仕上がりである。ちょうど良い塩梅でシャドウが潰れずハイライトは飛ばないということで贔屓にしている人が多いのは知っていたが、僕はもともとそういう安定感よりも、ピーキーで尖っていて危うい表現が好きなのでライカと同じく避けてきた。即ちツァイス(コンタックス)+コダックという組み合わせで頑張ってきたわけだが、今になってライカとイルフォードを取り入れたのは、やはり自分の内面の変化と加齢と共に、「若さ」よりも「円熟」へ好みがシフトしてきたからであろう。しかし、それに甘んじてはいけない。「円熟」が「保守」にならないように、そこはしっかりと意識を強く持ちたい。

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 18mm F4 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 18mm F4 Ilford HP5 Plus

HP5 Plusは、トーンが豊かだからアナログの引き伸ばしプリントだったら非常に焼きやすいと思う。ところが、スキャンデータの作成は少なくとも僕のやり方と環境では、簡単ではない。そのままでは眠い仕上がりになるので、階調の豊かさを維持しながら「締める」作業が必要になる。結果、TRI-Xを同等に処理するのに比べ、2、3手数が増えている。結果はTRI-Xより気に入っているし、手数を減らす目的でネガをもっと硬調に仕上げるのは違うのであろうと思う。

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

フィルムからスキャンデータを作るのは、暗室でのプリント作業よりも難しいかも知れない。デジタルな作業だから職人的な手仕事の鍛錬はいらないかもしれないが、完全に機械任せだとひどいものしかできない。web上には、それ以上先に進めていないモノもかなり出ている。機械いじりを楽しむことがメインのいわゆるカメラオタクのデータはたいていそんな感じかもしれない。本当に「写真」が好きではないのであれば、そういう人ほど意地を張らずにデジタルに早く移行した方がいい。

じゃあ、具体的にどうすればいいのさ、という問いに対する答えはここには書かない。以前なら書いていたと思うが、ネットの普及と共に安易に「答え探し」をしただけで満足してしまう輩が増えすぎた。いや、増えたというより、自分がもう辟易として根負けしてしまった。自分で考えて手を動かして、失敗しながらたどり着かないと何の意味のないものを、誰かが導いた「答え」を見つけただけで分かったつもりになる。あまつさえ、自分がその道のプロになったかのように、実際に作品を世に出してドヤ顔をする。そういうのは、以前は「カンニング」と言ったのだけどね。もちろん、フィルムの現像データなどみんなが同じようなことをしているものは、ネットを利用してどんどん情報を共有すればいい。そういうドライな部分に泥臭い部分が、飲み込まれてしまっている。デジタルネイティブだと思われている世代は、実はデジタル環境やインターネットによる情報共有をまだまだ使いこなせてないのではないかと思う。

再び強調したいが、僕はプライベート作品ではこのようにフィルムへの回帰「も」したが、仕事を含めた写真のメインはあくまでデジタルであり、そのテクノロジーをむしろ大歓迎している。言い方を変えれば、デジタルとアナログのどちらがいいかという二元論の対立ほど不毛な議論はないと思っている。しかし、安易な「答え合わせ」をカンニング行為だと恥じ入ることができないような下品さは受け入れられない。

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM Ilford HP5 Plus

地方の中心都市に行くと、Uターンした若者が始めたような古い家や蔵を改装したオシャレなカフェがたくさんある。ここ長野も例外ではなく、善光寺の周辺だけでもかなりの数があった。ただ、先の「ペンキ塗りたて」論ではないが、建物自体が古くても役割が新しいものにはなかなか写欲が沸かない。もちろん、そういう再利用を否定しているわけではなく、むしろ良い傾向と思っている。ただ、映画や車、そしてカメラ(レンズ)にもある「リメイク」を見渡せば、その難しさが分かる。リメイクには、まったく新しいものを作り出すよりもさらに高度なセンスが求められるように思う。予算がかけられないこの時代の日本では、なおさらだ。薄っぺらさが透けて見える「リメイク」や「回帰」にならないよう、僕も気をつけたい。

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Contax S2 Carl Zeiss Distagon 18mm F4 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Makro Planar 100mm F2.8 Ilford HP5 Plus

善光寺から少し中心市街地方面に歩いた所で時間切れ。こちらはなかなか奥が深そうである。次の機会に、長野に再チャレンジしたい。

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Contax S2 Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford HP5 Plus

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Contax S2 Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 Ilford HP5 Plus


  
   

by hoq2 | 2016-05-11 20:30 | 写真(Street Snap) | Trackback | Comments(2)

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Commented by korekazu at 2016-05-11 20:46
今回も楽しませていただきました。
ビオゴンは10万円もするんですね。そんなところに引っかかりもしたりして。
事後報告で恐縮ですがお気に入り登録させていただきました。これからもよろしくお願いしますm(__)m
Commented by hoq2 at 2016-05-13 13:06
ありがとうございます。korekazuさんの作品も閲覧させていただきましたが、私とはまた少し写真というものの捉え方自体も違っていたりして、大変勉強になります。

ビオゴンはコンタックスG時代から自分にとっては定番レンズです。安くて良いレンズもありますし、金額にはなるべく縛られたくないですね。私は貧乏ですけどw