【アドリブ旅行01】横浜から巡り巡って佐久平=part4(最終回)

「アドリブ旅行」
往年の「こち亀」の名エピソード
から拝借したこのフレーズが気に入っている。目的地不明、先の見えない旅。子供の頃からそういうロードムービー的な体験に胸が踊る。地についた足を離し、移動を開始する。その瞬間、肉体と精神が正真正銘の浮草になる。そして、社会や生きることのしがらみから自由になったような錯覚に陥る。

レンタカーの回送という仕事をご存知だろうか。ここではあえて詳細な説明をしないが、次から次へと乗り捨てられたレンタカーと鈍行列車を乗り継ぎ、全国の<下道>と<在来線>をぐるぐる巡って僅かな報酬を得る仕事である。次の目的地は直前まで分からない。

その点だけを捉えれば、自分にとってはこれは究極の「アドリブ旅行」である。ここでは、回送員として「稼働」した日々のロードムービー的な断片にスポットを当て、後のための忘備録を兼ねて写真と文章で記録していきたい。



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【アドリブ旅行01】<横浜から巡り巡って佐久平>の最終回である。

横浜から巡り巡って佐久平 Part1
横浜から巡り巡って佐久平 Part2
横浜から巡り巡って佐久平 Part3

最終日は宇都宮からのスタートである。国道4号線は埼玉から一瞬茨城に入り、栃木に至る。利根川を越えて栃木に入ったあたりから、めっちゃくちゃに道が良くなる。標準3車線の大バイパスで、立派な道の駅がいくつもある。

回送の世界では、一日の最後の配車は「寝車」と呼ばれ、午後8時〜深夜に営業所から引取り、納車先へ向かう。そして、深夜から明け方にかけて車内で仮眠を取り、「朝8時納車」(営業所が開くのを待って納車すること)あるいは「朝逃げ」(最寄りの鉄道の始発以降〜営業所が空く前に納車して“逃げる”こと)をする。

マジメな僕の場合、できるだけ納車場所に近い所まで行って仮眠するようにしている。たいていの場合、お客さん(各営業所)の納車希望日時に対して余裕を持って配車されるので、表向きは遅刻の心配はほとんどない。
しかし、実際は手配を受けたら、そこから最速で届けるのが普通である。ただでさえ稼げない仕事なのに、ゆっくりやっていたら餓死するレベルで稼げない。それに、「あいつは遅い」となったら干されるのは目に見えている。

要は、この業界もお多分に漏れず、「タテマエはこうだけど、実際は・・・」という極めて日本的な、アレな感じの構造なのだ。非契約社会では何が良くて何がダメか、綱渡りで自己判断しなければならない。そう、こういうことはだ〜れも教えてくれません!

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それはさておき、朝イチの宇都宮納車はありがたい。整った設備の道の駅で仮眠が取れ、道が良いので翌朝の移動もスムーズなのだ。これ以降、宇都宮で寝る機会は何度もあったので、配車係もそのあたりを分かっていて考慮してくれているのだと思う。

ちなみに、睡眠時間は3、4時間くらいが最も多いパターンだ。午前2時3時に最寄りの道の駅に着き、5時〜5時半に起きて「朝逃げ」。良い時は11時12時に着いて7時半起きで8時納車なんて時もある。あるいは、もう眠くてどうしようもなくなって、目的地まであと100kmほど残していても、とりあえず数時間眠ってまた起きてまた寝て、なんて細切れ睡眠になってしまうこともある。

いずれにしても、こんな働き方が成立するのは睡眠時間を削って働いてようやく「先進国」を気取れる日本だけである。異論がある方は一度「世界 睡眠時間」あたりでググっていただきたい。ただし、結構みんな電車・授業中・外回りの途中なんかで居眠りして調整しているよね。でなきゃ死んでしまう。僕の場合はこの仕事の時、朝の最初の1台でもう1回二度寝的な仮眠を取ることが多い(正真正銘の「ここだけの話」だが)。いくらワープアでも、最低最悪最低限の人権くらいは欲しいではないか。

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さて、今回は「朝逃げ」だったわけだが、初回ゆえのエンリョもあって5時半前には納車してしまった。雨上がりの宇都宮。しかも、こういう仕事でもなければ来ないような町外れである。この時間帯にカメラを持ってそういう場所を歩くというのは、とてつもなく貴重なスナップ体験なのかもしれない。少し不便な場所だったのが逆によかった。納車後、最寄り駅まで徒歩30分のコースをゆっくり楽しむことができた。

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この後、電車に少し乗って宇都宮の中心部へ。「二度寝」の時間を確保するためにも少し急がなければならない。NEX-7をしまって歩くことに専念しようとしたものの、ついついiphoneでチョコチョコ写真を撮ってしまうのであった。犬の朝散歩の時間帯だったので。

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たぶん、普通の精神を持った人は、一人で車を運転し、金がないので高速に乗れず、局面局面で蔑まれた視線を浴び、眠くてフラフラになって歩いて、また金がないので鈍行を乗り継いで、また車に乗って・・・なんてことを2日も3日も4日も5日も車中泊しながら繰り返していたら、参ってしまうだろう。金がいいのならまだしも、冗談抜きに子供のお駄賃級である。女性だったら移動中にわけもなく涙が出てくる、なんてことも絶対にあると思う。

まあ、僕はそういうアウトローな立ち位置に対する免疫がかなりあり、こういう面ではかなりタフだという自負がある。それでも、睡眠不足や不健康な疲労で精神的にドーンと落ちていく瞬間が、ないことはない。なんせ、僕は酒もタバコもやらないのでドーピングの手段もない。けれども、「写真」が大きな救いになるのだ。

僕の街頭スナップは、つまらないものをつまらなく撮っているのでつまらないと思う。ただ、現実の汚いことや辛いことは、写真というフレームに収まった瞬間に「情感」や「空気感」という美しさに寄ったものに変化する。ま、分かりやすく細かい所を端折って「写真のウンコは臭くない」とでも言っておきましょう。

だから僕は写真が好きだし、無益な放浪を続けることができる。

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さて、宇都宮から一度「ホーム」の東京に戻り、長野県の佐久平に向かう。実は、今回は2泊3日で軽井沢OFF(終了)を申請していた。原則的には登録した住所地の最寄り駅(僕の場合は、東京の下町の地下鉄駅)からのスタート・OFFになるが、「今回は軽井沢OFFでお願いします」というような申請をすれば、家とは別の場所で「稼働」を終えることもできるのだ。

僕は、長野県と東京の二重生活をしている。だから、今回のように「レンタカーの回送を自分の移動に利用する」というのもこの仕事をしている理由の一つである。長距離の交通費というのはバカにならないものである。そして、ブラックな仕事だからこそ「お互い様」が通じる。「こんなに悪い条件でやってるんだ。自分に都合よく利用してもいいだろう」という割り切りができる。相手もそこは分かっているので、「どうぞどうぞ」なのである。

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そういうわけで、最後の一台で東京から長野県に一気に移動!ありがとう。


【今回移動経路】オレンジ=車、白=電車・徒歩)
都内自宅 → 東白楽→館山 → 成田空港→相模原 → 蒲田→春日部 → 西新井→宇都宮 → 宇都宮→久喜 → 成城→佐久平 → 軽井沢

【今回使用機材】

    

by hoq2 | 2014-01-26 13:50 | 写真(アドリブ旅行) | Trackback | Comments(0)

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