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【アドリブ旅行01】横浜から巡り巡って佐久平=part3

「アドリブ旅行」
往年の「こち亀」の名エピソード
から拝借したこのフレーズが気に入っている。目的地不明、先の見えない旅。子供の頃からそういうロードムービー的な体験に胸が踊る。地についた足を離し、移動を開始する。その瞬間、肉体と精神が正真正銘の浮草になる。そして、社会や生きることのしがらみから自由になったような錯覚に陥る。

レンタカーの回送という仕事をご存知だろうか。ここではあえて詳細な説明をしないが、次から次へと乗り捨てられたレンタカーと鈍行列車を乗り継ぎ、全国の<下道>と<在来線>をぐるぐる巡って僅かな報酬を得る仕事である。次の目的地は直前まで分からない。

その点だけを捉えれば、自分にとってはこれは究極の「アドリブ旅行」である。ここでは、回送員として「稼働」した日々のロードムービー的な断片にスポットを当て、後のための忘備録を兼ねて写真と文章で記録していきたい。



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前回の続きです。

横浜から巡り巡って佐久平 Part1
横浜から巡り巡って佐久平 Part2
横浜から巡り巡って佐久平 Part4

早朝に館山を出て、午前9時に成田空港に到着。空港第2ビル駅で降りるが、引取車のある営業所は空港の敷地外にある。当然、自分以外の列車の乗客は全員空港そのものが目的地だ。

ここで疎外感を感じたり、海外に行く人を羨むような「社会適合者」ではこの仕事は務まらない。手荷物検査が済んだら1Fの国際線到着ロビーに向かう。ただし、空港施設はサクッと通過して外に出る。この一連の動きを無感動に淡々とこなせるくらいがちょうどいい。「みんなと違う」ことをみじめに思ったり孤独に感じたりするどころか、誇りに思うくらいな異常性がある者にしかできない仕事なのだ。

空港ターミナルから歩いて「町場」に出ることがどれくらいイレギュラーかは、すぐに分かる。歩道が一切ないのだ。バスや送迎の車がビュンビュン向かってくる車道を歩くしか方法がない。警備の警官に下手に怪しまれないよう、ここも淡々と歩くしかない。車用のチェックポイント(爆発物の検査などをするゲート)の横の狭い通路を超えればようやく外だ。

このルートは後に何度も通ることになるが、初回はやはりルート取りに失敗し、チェックポイントを横断する羽目になってしまった。ここで警備員に呼び止められ、事情説明や身分証の提示など少々面倒な目に遭ってしまった。

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外界に出てすぐ、神社がある。空の安全を祈るために造られたというわけではない。三番叟という祭事があるような、もともとある伝統的な神社である。空港建設の際、神社だけは取り壊せなかったのだろう。マンションなどの開発でも小さな祠や神木を無理やり避けて建てることが多い。お寺や教会ではあまりそういうことはなさそうなので、日本人の神道系の祟り的なものへの畏れは、相当なものなのだなあ、と思う。

何しろ僕は高校ー大学時代に三里塚闘争の末期の現場を多少見ているので、余計にそう思うのだ。空港反対派住民の田畑は強制徴用できても、神社はなんの迷いもなく手付かずで残す。日本人はよく「無宗教です」なんて自嘲気味に言うが、この神社系の宗教観は21世紀の今でも相当に業の深いものだと僕は思う。
(断っておくが、僕は「反対のための反対」の様相を呈していた後期の成田闘争には与しない。過激派シンパの友人に誘われてあくまで中立な立場だと断ったうえで反対派主催の野外コンサートに参加したりしていた。ついでに言えば、自分は政治的には今の日本のバランス感覚では右寄り=世界的に見れば中道左派、であろう。いずれにせよ、思想信条によって個人的な友人付き合いや自己表現のステージを選別したりはしない主義である)

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警備厳重な国際空港の一歩外というのはエアポケット的な空間である。誤解を恐れずに言えば、非常に殺伐としていてただでさえ殺伐としている千葉県にあって「チバ中のチバ」といった趣である。千葉県、それはワールドスタンダードな「大都市の隣」の「忘れられた土地」である。決して嫌いではない。海外旅行に行った時には、治安が著しく悪そうでない限りはそういう町を積極的に歩く。がしかし、住むのはちょっとなあ、というのが正直なところだ。

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さて、ここから相模原へ。113キロコースである。この仕事で一番眠いのは、夜中よりもむしろ車中泊空けの午前中だ。そういうキツイ時間帯を挟むゆえに、写真はなし。納車後、この日3台目を引き取りに蒲田へ電車移動。日が落ちてから埼玉の春日部に向かう。都内経由の4号線(昭和通り)ルートは馴染み深いので気が楽だ。

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春日部に到着したのは、夜9時ごろ。通常の夜間納車(閉店後の無人の営業所にヒミツの手続きに従って納車)で特に問題なし。ただ、思ったのは、今回は駐車スペースが非常にタイトで、こういうケースは珍しくないだろうということ。(運転にあまり自信のない人は苦労する=いつか必ずぶつけるだろうなあ)と思いながらのツメコミ駐車であった。

トラックで荷物を運ぶのなら車を少々こするくらいは問題ない。しかし、運んできた荷物を傷つけたら弁償モノだろう。厄介なのは、我々の荷物は車そのものだということだ。剥き出しで傷つけるリスクが高いうえに高価。この点で、一般の運送業に比べてもリスキーな業務である。

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何はともあれ、本日はあと一台。東武で足立区に戻って、宇都宮方面へ。得意の「朝逃げ」後、次回は未明の宇都宮からスタートの最終日です。


【今回使用機材】

  
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by hoq2 | 2014-01-26 13:49 | 写真(アドリブ旅行) | Trackback | Comments(0)

(フォトジャーナリスト・内村コースケ)写真と犬を愛するフォトジャーナリストによる写真と犬の話。写真は真実の写し鏡ではなく、写像である。だからこそ面白い。


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