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雨の早稲田とイカのスキー帽

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「大学の国際化」という教育雑誌記事の取材で久しぶりに母校に行った。出身大学や帰国子女であることを言うと、どういう言い回しでも自慢に取られてしまうことが多く、困る。ほら、この時点で自慢になっちゃう(←この文章も自慢っぽい)。もうどうしようもない。だから、はい、自慢です。帰国子女で早稲田卒です!(←これも自慢っぽい)

駅から本部キャンパスに向かう間に何人もの学生や教員らしい外国人とすれ違った。早稲田は今、文科省のグローバル人材育成推進事業に全学的に進めているプログラムが採択されるなど、国が進める「教育のグローバル化」のお手本のような存在の一つになっているらしい。昔ながらのバンカラなイメージからは想像しにくいが、バンカラ=自由・自主独立であるとすれば、違いや多様性を認める設立当初から続く校風とグロバール対応というのは案外結びつきやすいものなのであろう。

グローバルな視点とは、自分をしっかり持ちつつ、違いを認めて異文化ともフラットに接することだと僕は思う。日本ー外国という視点では、英語ペラペラでほぼアメリカ人みたいな日本人よりも、日本文化をしっかり背負ったうえで外国人と対等に付き合える人が国際的なのだ。つまり、英語ができるとかできないとかいう以前に、独立した自由人でなければいけない。だから、僕は内心、早稲田的=自由人であることを、(偏差値だなんだというくだらないこととは別の次元で)自慢してもいい時代がやっと来たのではと思い始めている。「早稲田はもともとグローバル志向が強い大学である」と、この日取材した大学の人も断言していた。

こんなことを書いたけれども、少なくとも僕の周りの早稲田出身者は照れ屋さんが多いので、会ってもあまり大学の話はしない。まして肯定的に思い出を語ることはほとんどない。誰かが「わ」と言おうものなら急に覚めた表情になったり、眉間にシワを寄せたりする始末だ。出身じゃない人に話を振られたら「ああ、いやあ、はあ・・・」みたいに曖昧な返事でやり過ごす。一方で、文字通り色んな奴がいるのも事実だ。偏差値教育時代の「早稲田」のブランドを、恥じらうことなく今だに後生大事に抱え込んでいる奴も約一名知っている。また、自由を履き違えて調子に乗って事件を起こすようなスーフリのようなバカが絶えないのは、この大学が本質的なレベルの低さも抱えていることを示しているとしか言いようがない。

政治的には左翼色が強いイメージがあるかもしれないが、実際は保守中道革新左右まんべんなくいた。極左のI君と極右のK君が「戦争は絶対ダメだ」「だからなんでダメなんだ?」「ダメに決まってるじゃん」「ダメなのはお前の頭だ!」なんて顔を合わせてはやりあっていたのを思い出す。僕は中国や日本、インドなどの哲学を学んでいたが、同じ中国哲学の先生でも、台湾のことを言うと怒り出す日本人なのに人民服みたいな格好をした赤い人もいれば、「中国では」なんて言おうものなら、「お前が言う中国は人民共和国の方か!あれは中国じゃない!ちゃんと中共と言いなさい」なんてウォンバットのような顔で怒り出す先生もいた。

ちなみに僕はイデオロギーそのものを否定する俺流派だが、今の学生もそんな感じなのかなと思う。あれだけあった共産主義アジテーション的な左翼学生の立看板が(既に全国的には絶滅の危機にあった時代です)今回は全然見当たらなかった。やっと、前世紀の古臭い世界観から皆が完全に卒業できたのだとすれば、めでたいことですね。


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当時は早稲田通りの反対側のキャンパスに通っていたので、大隈講堂とかがあるこの本部キャンパスにはそれほど馴染みがない。そのせいかも知れないが、特に懐かしいとも「変わったなあ」とも思わなかった。普通に「ああ、早稲田だなあ」という感じ。学生の雰囲気も、もちろん体型・ファッションは現代っ子そのものなんだけど、不思議と違和感はなかった。

早い晩飯を食べに入った早稲田通りの盛りの良い揚げ物定食屋で、サークル仲間っぽい男女学生の集団が明るいうちからビールを飲んでいた。それは昔と変わらない光景なんだけど、この会話にはちょっと「おっ」と思った。「私、飲めないんだあ」「いや、別に強制じゃないから」ー。僕の時代は強制でした!羨ましいなあ。マイペースで飲むことが許されるようになった今は飲みの誘いは断らないけど、本当は体質的にほとんど飲めない。酒がおいしいとも思わない。学生時代からサラリーマン時代にかけては酒の強要が本当に辛かった。

食堂、喫茶店、飲み屋などが集まる学生街が周りにあるのは、街なかの大学ならではだろう。これが、今は結構貴重。郊外の広くて設備の整った大学もいいけれど、僕はやっぱり早稲田のような環境が性に合う。


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今回は傘片手のNEX-7 + CZ Sonnar 24mmの一本勝負・適当撮り。来週また同じ取材の続きで来るので、雨降りじゃなかったら、久しぶりに高田馬場から撮り歩こうかな。


関係ないけど、↓ のような帽子は何て呼べばいいんですか?子供の頃から「イカのスキー帽」って言ってるけど、通じない。

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by hoq2 | 2013-06-21 21:55 | 写真(Street Snap)

(フォトジャーナリスト・内村コースケ)写真と犬を愛するフォトジャーナリストによる写真と犬の話。写真は真実の写し鏡ではなく、写像である。だからこそ面白い。


by hoq2
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