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アイメイト55周年記念誌

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今回は、アイメイト協会の55周年記念誌「EYEMATE 視界を拓くパイオニア」の紹介をさせていただきます。

2012年は、国産盲導犬第一号ペア、河相洌(きよし)さんとチャンピイが誕生して55年目になります。この記念誌は、A4判・フルカラー80ページのなかなか立派な冊子です。

表紙は、県庁で現役バリバリで働く男性使用者です。どうですか?颯爽と歩く姿からは、目が見えない人とは思えないのでは?アイメイトと歩くとは、このように「見えている」ということなんです。表紙撮影用にお願いして今年できたばかりの東京ゲートブリッジを歩いてもらいました。55年の歴史という"ゲート”を抜けて、未来に向かって歩み続けるイメージです。ちなみに背表紙はこのようになっています。

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中は以下の6章構成で、これ一冊読めばアイメイトの55年のすべてが分かります。アイメイト協会監修のもと、編集、写真、記事執筆を担当させていただきました。



アイメイト55年の歴史がビジュアルで分かる <巻頭グラビア>

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歴史を作った使用者からの「メッセージ」

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上のページの河相洌さんは、最初の国産盲導犬使用者です。大学生の時に失明し、すぐに自立のために国内では事実上前例のなかった盲導犬と歩くことを目指します。そして、チャンピイと塩屋賢一さんに出会い、後に続く視覚障害者のためにも、新たな道を切り開いたのです。

 聖書のヨハネの福音書9章に、キリストのもとに弟子が一人の盲人を連れてきて「この人間が見えなくなったのは誰の罪なんだ。親の罪か本人の罪か」と聞くところがある。キリストは「親の罪でも本人の罪でもない。神の栄光がこの人間に表れたためだ」と答える。これはね、ちょっと解釈しにくいんですよ。僕も最初に読んだ時は「神様の栄光なら何も見えなくしなくたっていいじゃないか」と思った。だけど、何十年も盲人として生きてきた今は、体験的に言って僕が見えなくなったのにはやっぱり特別な意味があったのだと思うようになりました。「お前は盲人として生きろ」というふうにね、神様が言ったのだと。塩屋さんとの運命的な出会いとか、具体的な裏付けが色々あっての結論なんですけれどね。
 そういう人生観というのかな、人間観を障害者は持たなきゃいかんと思います。自分が障害を背負ったということには特別な意味がある。その中で自分が力強く生きていくことが、社会全体の人々にどういう影響を与えているか。そういうふうに意識してほしい。今は社会環境も随分改善されて障害者も生きやすくなっていますが、善意の皮をかぶった根本的な差別意識というものも根強く残っていると感じます。それに負けて弱くなっちゃって、例えば「〇〇は差別語だ」などと末梢的なことにこだわって目くじら立てるような狭い根性では、盲人が普通の人間と肩を並べることはできないと思う。それが僕の基本的な考え方。だから、他の視覚障害者にもそれを望みます。


外交官の息子としてカナダで生まれ、戦中を大連で過ごした河相さんは、本当の意味での国際人でもあります。国際人として広い視野を持っていたからこそ、前例や慣習・因習にとらわれず、「盲導犬と歩く」という前人未到のチャレンジができたのだと思います。誰かに言われたから、勧められたから、というのではなく、自分で考え行動を起こしたからこそ、塩屋さんやチャンピイとの出会いが待っていたのでしょう。そして、物事を自分のことだけでは収めず、社会全体に広げて考えるのもまた、芯の通った視野の広い人にしかできないことです。私はこういう人こそが真のインテリだと思いますし、河相さん以上のインテリに出会ったことがありません。

この章では、河相さんのほかに、初の女性使用者で最古参の現役アイメイト使用者でもあり、戦後間もなくアメリカ留学を経験している戸井美智子さん、アイメイトの社会進出に尽力してきた佐藤憲さん、バス乗車や議会の傍聴に力を注いだ荻原文江さんのメッセージも掲載しています。いずれも、含蓄のある内容のインタビューになっています。アイメイト使用者とは、障害があるから社会の施しを受けているという、受け身の存在ではありません。河相さん、戸井さん、佐藤さん、荻原さんのように自ら道を切り開くために、アイメイトと歩むことを積極的に選択した人たちなのです。


塩屋賢一とアイメイトの歩み

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塩屋賢一(1921〜2010)は、アイメイト協会の創設者であるのみでなく、日本の盲導犬そのもののパイオニアです。現在は、10団体がそれぞれ盲導犬を育てていますが、そのすべての始まりは、塩屋賢一が戦後すぐに出会ったシェパード犬「アスター」と共に実地と研究を重ねて編み出した成果に依っています。他の団体が一般名詞になっている「盲導犬」を使っているのに対し、「アイメイト」という呼称には、オンリーワン・オリジナルな存在だという意味も込められています。「パソコン(PC)」に対する「マッキントッシュ(Mac)」に似ています。この章では、「盲導犬」と翻訳されていた存在が、いかにして「アイメイト」になったのか、当事者の塩屋賢一の生涯と共に綴っています。


アイメイトを得ていきいきと暮らす

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この章では、現役使用者10人のそれぞれの生き方を紹介しています。失明してショックを受けて閉じこもった日々を過ごした方も、飄々と先に進んだ方もいます。抱える背景や事情はさまざまで、一口に「視覚障害とはこういうものだ」ということは言えません。共通しているのは、アイメイトと暮らす「今」が輝いていること。その輝きを得るまでには、皆さん大変な苦労をされています。そして、今もその過程にいる方が大勢いることも忘れてはなりません。

この記念誌の特徴は、この章を中心に「人の物語」が多く語られていることです。大半の盲導犬関係の本、映像、報道、広報ツールなどは、「犬」を中心に語られているのではないでしょうか?これは私見ですが、「けなげ」で「かわいい」犬が、「頑張っている」。今の日本ではそればかりが強調されている。「けなげ」というのは少し違う気もしますが、確かにそれは事実です。僕も家庭犬であろうとアイメイトであろうと盲導犬であろうと、純真な犬たちが大好きです。彼らに教えられることもたくさんあります。しかし、お涙ちょうだいなだけの映画であったりと、そうした人々の犬に寄せる思いを見透かして金儲けや宣伝をする輩が多いことが非常に残念です。それは一見、犬に寄っているようで、実際は個人や組織の利や欲に犬の純真を利用している。犬差別だと思います。障害者を「かわいそう」と見下して無用なことをする善意の皮をかぶった差別に似ている。

アイメイトの物語の主役は人なのです。対等なパートナーですから、もちろん犬も主役なのですが、人の言葉で語る物語の中心は人であるべきです。犬の"言葉”を聞けない私たちが、勝手に「言葉」で解釈して語るのは傲慢というものです。だから僕は、犬の写真を撮るのです。犬について言葉で多くを語るのは失礼だと思います。

そして、アイメイト協会の理念は

「アイメイト協会の仕事の本分は人間教育である」

というものです。人に対する歩行指導を通じて、自立した人生を切り開くお手伝いをしているということなのです。「盲導犬の訓練所」というよく言われる解釈は間違っています。

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What is Eyemate?

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ここでは、よく誤解されたり理解が十分でない、アイメイトの実際を解説しています。

たとえば、「盲導犬」という言葉の持つ危うさに、「利口な犬が盲人を導いて歩いている」という誤解が生じやすいということが挙げられます。アイメイト歩行では、実際は十分に協会で歩行指導を受けた人が犬に指示を出して歩いています。道順は人が頭の中で覚えています。一方、犬は交差点ごとに止まったり、急な車の飛び出しなどに反応して危険を回避したりという自主判断をして安全な歩行をサポートします。だから、人の「目」であり、対等なパートナー、「仲間」を意味する「EYE」+「MATE」=EYEMATEなのです。この点も、あえて「盲導犬」とは呼ばない理由です。

また、アイメイト歩行は、同行者や白杖に頼らずに人と犬のペアが単独で歩くことです。国内の他の育成団体では、単独歩行を認めていなかったり、できなくても良しとすることがほとんどです。「視覚障害の自立支援」の理念から、単独歩行は自立の必要条件だというのがアイメイト協会の考え方です。第二号使用者の松井新二郎さんは「歩行の自由を得れば、盲人の問題は50%解決できる」と話しています。


アイメイトを支える輪

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アイメイト協会は非営利の公益財団法人です。アイメイトの育成は、全国各自治体の委託事業として行われていますが、個人・団体の寄付金や奉仕活動などの善意に頼る面が非常に大きいのです。この章では、後援会活動や繁殖・飼育・リタイア犬奉仕、企業からの支援などの紹介をしています。

特に協会と接点を持たずに個人でできることもいくつかあります。後援会員の皆さんが定期的に行なっている募金活動に寄付金を寄せたり、協力企業・店舗には募金箱もあります。

私個人からはアイメイト・サポートグッズのオンラインショップからのアイメイトグッズの購入をお願いします。インターネット上のみでできるために、最も時代にマッチした個人レベルでの支援だと思うからです。グッズの収益は全額、後援会から協会へ寄付されます。ショップサイトやグッズの充実には、私も仕事として協力しています。ご意見、ご要望があればお寄せください。


尚、記念誌は非売品です。9/30の55周年記念「アイメイト・デー」の式典で配布されたのを皮切りに、現在もアイメイト協会で配布中です。私の所にも若干数残っております。この記事からのご用命はまずは私へご連絡願います。

by hoq2 | 2012-11-18 01:07 | アイメイト | Trackback | Comments(0)

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