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【Dog Snapshot 10】原子心母主義

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原子心母主義

『原子心母』というのは、ピンク・フロイド(昔のイギリスのプログレッシブ・ロック・バンド)の曲である。原題の”Atom Heart Mother”のまんま直訳だが、僕はこの邦題の方が好きだ。LPレコードの片面全部で1曲というこの長いインストゥルメンタル曲は、日本でも1971年に箱根の野外コンサートで演奏され、当時はものすごい話題になったらしいのだが、僕は生まれたばかりだったのでよく知らない。

この曲に出会ったのは、小学生の頃だったと思う。曲の中で効果音的に使われているバイクの爆音と共に、シンナー臭い団地の子供部屋を思い出す(誤解を解くために弁解すると、プラモデルに色を塗る時に、部屋がシンナー臭くなるのです)。部屋を共用していた4つ上の兄がよくかけていたのだろう。本格的にハマったのは自分の意思でこの曲を聴き始めた高校生の時だった。オーケストラとバンドの演奏が融合した、現代音楽の一種と言っておこう。タイトルの影響もあるが、母体の神秘を原子レベルで理系的かつ神秘論的に連想させられる、前衛的な曲だ。

それはさておき、曲そのもの以上に影響を受けたのがレコードジャケットだった。乳が張った乳牛のホルスタインが一頭、こっちを向いているシンプルな写真だが、これがいい。中面の、ホルスタインが散らばる牧場を俯瞰した粒子の荒い白黒写真も印象的だった。どちらもなんてことはない写真かもしれないが、ジャケットとして、曲のイメージそのままの素晴らしいモダンアート作品だと思っている。

とにかく、『原子心母』の影響で、ホルスタイン柄と動物の乳房は僕の中では「アート」である。ホルスタイン柄は、フレンチブルドッグ言えばパイド柄。うちの犬がパイドなのも、無意識的に選んでいたのかも知れない。もちろん、この写真も、原子心母主義の僕としてみれば、自動的にシャッターを切ってしまう芸術的瞬間なのである。

『WAN』2007.3月号掲載
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by hoq2 | 2011-01-10 10:56 | 写真(Dog Snapshot) | Trackback | Comments(0)

(フォトジャーナリスト・内村コースケ)写真と犬を愛するフォトジャーナリストによる写真と犬の話。写真は真実の写し鏡ではなく、写像である。だからこそ面白い。


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