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Dog Snapshot<5> 番犬

番犬
東京・新橋/ 2006
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 庭先につながれた番犬、というのは日本ではよく見られる光景である。僕も新聞記者時代、事件取材の「地取り」(警察の聞き込みのようなもの)でよく田舎の一軒家を回ったが、こうした犬たちに激しく吠えられたものだ。北海道に住む兄などは、営業で訪れた家の犬にズボンをズタズタにされたこともあったと聞く。

 彼ら、彼女らに求められているのは、ペットとしての従順さや愛嬌ではなく、部外者を撃退する警戒心と勇気である。以前取材した和歌山の山中に暮らす紀州犬の飼い主などは、不審者に噛み付いたことを自慢していたし、庭にいた蛇をくわえてぶん回したと満足げに話していたものだ。

 一方、都会では室内犬が一般化しているが、僕が暮らす東京の下町では、まだ「座敷犬」という日本的な言い方をする人が多い。小学生の頃に通っていた習字教室のヨーキー(ルリちゃん)が、その典型だ。そこはまさに座敷が教室になっていて、奥にどっかと座るおじいさん先生はいつもルリちゃんを抱いていた。生徒には容赦なく厳しい言葉を浴びせるのだが、その舌の根も乾かぬうちに膝の上のルリちゃんには「ル~リルリルリルリ・・・いい子いい子」と、犬なで声。僕の字は今でもとても下手だが、その教室では大人の二面性を学んだものだ。

 欧米人は鎖でつながれた日本式の番犬を見て「虐待だ」と言う。その是非はさておき、このガード下の飲み屋街に鎮座するコリーは、酔っぱらいの目くらいはごまかせるのだろうか?店が客を追っ払っては本末転倒なのだが、来客を歓迎しているようにも見えない、不思議な“番犬”である。

『WAN』2006.10月号掲載

by hoq2 | 2010-11-25 00:39 | 写真(Dog Snapshot) | Trackback | Comments(0)

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