【21st Century Snapshotman】2016.12.25 クリスマス・デーのアメ横・上野公園
2017年 02月 19日
アメ横に初めて行ったのは、ミリタリー少年だった小5か小6の頃だ。お目当てはもちろん、中田商店で、初めて買ったのは弾痕のような穴が空いた米第1騎兵師団のウールジャケット(500円)だったように記憶している。近隣には、僕のソウルフード(札幌ラーメン「えぞ菊」の味噌)もあるので、東京を離れた今もアメ横にはちょくちょく立ち寄る。
ここは、街頭スナップの舞台としても僕の定番である。特に、街頭スナップの一ジャンルと言えるほど、これまた定番化している「群衆」を撮る場所として、真っ先に候補に上がるのがここだ。あるいは、一般的には渋谷のスクランブル交差点もまた群衆撮影の定番であろうが、僕は新聞カメラマン時代に命じられて撮った以外には「渋谷の群衆」を撮ったことはない。渋谷は幼少時に過ごした町のターミナル駅で、上野は10代後半以降に過ごした町のターミナルである。どちらにも愛着はあるのだが、今現在現実として目の前に現れる人々や風俗に肯定感や愛情・愛着を感じるのは、スクランブル交差点やセンター街よりもアメ横や上野公園の方である。それにはたいした根拠はなく、個人的な感覚の問題に過ぎない。
昨今の東京都心はどこへ行っても外国人観光客が多いが、アメ横に限っては、国際色豊かなのは昔から変わらない。観光客よりも、在住外国人の日常の買い出しが多いという印象も、今も昔もあまり変わらない。僕は生まれがビルマ(ミャンマー)なのだが、記憶には全く残っていないものの、大人になってから何度か訪問したことがある。アメ横へのある種の共感は、そこからも来ているかもしれない。
今回の写真は昨年(2016年)の12月25日、クリスマス・デーに撮ったものである。年末から最近(2月中旬)まで結構忙しく、アップに2ヶ月弱かかってしまった。フィルム撮影という今時面倒くさいことを継続するために最も大事なことは「未現像フィルムをためない」ことだと思っている。このブログにUPすることが当面のゴールである以上は、もっとスピーディーにUPしないといけない。
それはともかく、日本のクリスマスが事実上イブで終わるとはいえ、上野・アメ横のクリスマス感のなさは見事であった。既に歳末の大混雑の兆しが見えていて、むしろ日本の年末年始のムードがたっぷりであった。形だけ・雰囲気だけ豪華な日本のクリスマスに辟易としている自分には、これもまた「ちょうどいい」のが、下町である。
本格的にモノクロフィルムでの街頭スナップを再開して間もなく1年になろうとしている。フィルム撮影は、デジタル撮影に比べてイニシャルコストが安いがランニングコストは高い。両刀使いの自分としては、フィルム代・現像代になるべくお金をかけたくないので、基本フィルムではカラーはやらず、モノクロフィルムの自家現像のみ(コスト面だけでなく、カラーは純粋にデジタルに分があるという持論もある)。また、銀塩プリントはせず、デジタルスキャンとインクジェットプリントで仕上げる(私の腕では今やその方がきれいに仕上がるという現実もある)。もっとも、99%はスキャンしてネットに上げて終わり。プリントまでするのは稀である。
このようなフィルムとの付き合い方で唯一まとまったコストがかかるのは、フィルム代だ。今やアナログレコードのようにマニアックな趣味の領域に固定化された感があるフィルムは、往時に比べて1.5倍から2倍くらい高い。35mmフィルムの36枚撮りが、1本500円〜700円というのが僕の感覚だが、実際には900円〜1200円といったところだ。そこで、少しでも往時のコスト感に近づけるため、僕は学生時代に逆戻りして長巻フィルムを使っている。30.5mのフィルムをフィルムローダーにセットして自分でパトローネに込めていくと、36枚撮りで約20本取れる。僕が常用しているイルフォードHP5プラス(ISO400)とFP4プラス(ISO125)だと、1本あたりのコストは600〜700円となる。
ただ、このやり方は、色々なフィルムを使いたいという人には向いていない。今の自分の場合は、それほど実験的習作主義ではなく、安定したクラシック品質のフィルムにくっついていたいので問題はない。定番モノクロフィルムといえばTRI-Xなのだが、HP5なのは、単純に今はTRI-Xが高すぎるからである。また、最初はISO400固定でHP5一本だったが、その後、ISO100相当のFP4プラスも併用している。それにはインスタマチックカメラの導入が関係している(それに関する詳しいいことは、【126フィルム インスタマチックでスクエアフォーマット】 ローライ A26復活への道 をご覧いただきたい。今回もローライA26とライカ&コンタックスを併用して撮っている)。
いつも同じフィルムで撮るとはいっても、増感・減感をすることにはやぶさかではないわけで、夕暮れや夜間のスナップではHP5をISO800に増感しているし、A26で撮影する時はFP4をISO64相当に減感している。今回は晴天だったが、ガード脇・ガード下のアメ横はいつも暗いので、ISO200で撮りたかった。HP4(ISO400)を減感するか、FP4(ISO125)を増感するか迷ったが、後者を選択。標準よりも柔らかめのネガか硬めのネガかという選択だったわけだが、増感=硬めはアメ横・上野公園という場所には合っていたと思う。ただし、かなり固い描写をするエルマーM50mmで撮った写真は、特にハイライトの白飛びが粗っぽいレベルまで行ってしまった。それも決して嫌いではないのだが。
不忍池を経てアメ横に戻る。アメ横センタービル内で、ささやかなクリスマスの残滓を見た。
【使用機材】
・ライカM6TTL
・エルマーM50mmF2.8
・Mロッコール90mmF4
・コンタックスS2
・ディスタゴン25mmF2.8
・ディスタゴン18mmF4
・ローライA26