【21st Century Snapshot Man】2016 6/12 浅草今昔物語
2016年 06月 30日
Leica M6TTL Minolta M-Rokkor 90mm f4 Ilford HP5+
今、浅草を歩いてる観光客のほとんどが外国人だというのは周知の事実だ。一番古い浅草の記憶は小学生だった1979年ごろで、はっきりと覚えているわけではないが、案外閑散としていたと思う。いったん生まれ育った東京を離れることになる1990年代半ばまでは、上野・浅草は新宿、渋谷、銀座、池袋よりも寂れた繁華街だったと思う。庶民に成熟した感性がなかった時代である。カッコいいのはきらびやかで流行ど真ん中の原宿や渋谷で、要するに上野や浅草はダサかったのだ。そんな中で、もともと目黒・品川の官舎に住みつつ海外赴任を繰り返していた我が家は逆の感性を持っていた。古き好き日本的なイメージの下町の方がかっこ良く思え、わざわざ買ったばかりの世田谷(といっても外れの)のマンションを売って葛飾区の京成線沿線に引っ越したのだ。それが高校2年の1986、7年のことで、大学卒業までそこにいた。そして、地方勤務から東京に帰ってきた2000年に、僕は初めての東京一人暮らしを谷中でスタートし、その後同じ台東区内の下谷を経て、再び葛飾区に戻るという10年余りの下町生活を送った。そんなわけで東京の下町が準地元的な僕にとっては、やはりその象徴的な存在である浅草は、たびたびカメラを手に歩く大事な街頭スナップエリアの一つである。
20世紀の浅草と、近くに住むようになって以降の21世紀の浅草は、町そのものはあまり変わっていないように思うが、観光客の数と層はガラリと変わった。昔は年寄りや田舎の修学旅行生が中心で(東京にしては)閑散としていた。今は、外国人観光客と少数派の日本人の若いカップルで溢れかえっている。
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Leica M6TTL Elmar-M 50mm f2.8 Ilford HP5+
Leica M6TTL Elmar-M 50mm f2.8 Ilford HP5+
Leica M6TTL Elmar-M 50mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
山暮らしをしている今も、ちょくちょく浅草には来ているが、ちゃんと写真を撮ったのは久しぶりだ。外国人観光客が輪をかけて多くなっていたのは予想通りだったが、以前は比較的アジアからの団体客やバックパッカー風の欧米人が目立っていたように思う。最近は中国・台湾・韓国の若い女性も目立つようである。そして、彼女たちの間では、レンタルの着物(事実上は浴衣)を来て浅草寺周辺を歩くのが流行っているようだ。浴衣で観光・デートは日本の若者の間でも流行っているので、その影響か、あるいは向こうの旅行ガイドやテレビで紹介されているのかもしれない。本人たちも楽しいし、見る方も嬉しい。特にこういう街には合う。こういう流行は素直に歓迎したい。
Leica M6TTL Minolta M-Rokkor 90mm f4 Ilford HP5+
Leica M6TTL Minolta M-Rokkor 90mm f4 Ilford HP5+
Leica M6TTL Minolta M-Rokkor 90mm f4 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Leica M6TTL Minolta M-Rokkor 90mm f4 Ilford HP5+
今回メインで使っているレンズは、ライカM6に装着のミノルタ・M-ロッコール90mmとElmar-Mの50mmだ。前回の投稿【Nagano Snapshot】プアマンズ・ライカで歩く中山道・和田宿 で、マウントアダプターを介してのデジタル撮影で準備運動はしていたものの、この2本はネイティブのMマウントボディでのフィルム撮影には、初めて投入した。モノクロフィルムを撮ってよりはっきりと分かるレンズの個性というものがある。ロッコールには国産レンズらしい、良く言えば欠点の見当たらない、悪く言えばおとなしい描写を、エルマーMには反対に重厚感のあるライカらしい描写を感じた。ロッコール90の方は前身のライツミノルタCL用のライカ製のエルマーC90の発展型なのだが、レンズ構成がほぼ同じなのにもかかわらず、日本のメーカーが手掛けるとこうなるのか、という見本のようなレンズかもしれない。一方、エルマーは、戦前から1960年代にかけてのライカレンズの権化とも言えるレンズで、今回使ったエルマーMは1995年から2007年まで作られていた復刻版に近いようなレンズだ。フィルムカメラ末期の製品だけあって、さすがに恐ろしくシャープかつコントラストが高く、カラーでの色乗りも素晴らしい。カタログスペック上の限界は別にして、フィルム用にはこれ以上望めないような標準レンズかもしれない。
もちろん、どちらのレンズにしても、芸術的な意味での良さは使う人のセンスや好み、腕による。ただ、「間違いのない高水準」をしっかりクリアしつつ、プラスアルファの魅力がある色気のあるレンズなのは間違いない。
今回はサブカメラ的に使っているコンタックスS2につけたディスタゴン25mmも、実際の画角は一般的な28mmに近い、広角の基本中の基本のレンズである。コンタレックス時代の古い設計ゆえに特にカラーでの使用の際はクセ玉の部類に入るが、こちらも厚みのあるァイスレンズの中ではライカ的な描写で、エルマーやロッコールと組み合わせての相性は良いと思う。
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
フィルム現像は、今回からD76の1:1にマイナーチェンジしている。モノクロフィルム撮影を再開してから、
「トライX・T-MAXデベロッパー1:7」→「HP5 Plus・T-MAXデベロッパー1:7」→「HP5 Plus・ID-11 1:1」と試してきたが、最終的には、この「HP5 Plus・D-76 1:1」に落ち着きそうだ。持続可能な経済性・利便性と仕上がりの良さのバランスの良い所を模索した結果、これがベストと判断した。トライXとHP5 Plusはコダックとイルフォードのメーカー違いの同等品で、長尺ロールが安いHP5 Plusを選択。経済性ベストの「T-MAXデベロッパー1:7」は、コントラストが低いネガの仕上がりがフィルムスキャナー向きではなく、結局メーカー指定のD-76系を1:1で希釈して11分現像するという処方に立ち返った(T-MAXのメーカー指定の希釈率は1:4で、1:7はややイレギュラーな使い方になる)。ID-11はイルフォード製のD-76と同等品だが、こちらはフィルムと逆でD-76の方が割安だから、結果的に「フィルムはイルフォード、現像液はコダック」という組み合わせになった。この選択については、この浅草の撮影の後、山に帰ってから撮影した“カントリー・スナップ”でさらに確信を強めたのだが、この話の続きはそれらの写真をUPした時にしたいと思う。
Leica M6TTL Elmar-M 50mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Leica M6TTL Elmar-M 50mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
浅草に一番よく来ていたのは、徒歩圏内の下谷に住んでいた10年くらい前のことだ。その頃は犬の散歩をするのが仕事のようなものだったから、もう亡くなってしまったフレンチブルドッグの「ゴースケ」や「爺さん」、そして今も長生きしてくれている「マメ」ともよく来たものだ。
ゴースケ
マメ
爺さんと浅草のことは、このようにフリーペーパーにも書いたこともある。
もう亡くなってしまった犬たちとの思い出が詰まっているから、浅草は胸が締め付けられる場所でもある。僕はゴースケの遺骨を浅草寺のお守りに入れて、いつも一緒に持ち歩いている。この日の撮影も、もちろん一緒だった。
Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+
Leica M6TTL Elmar-M 50mm f2.8 Ilford HP5+
Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+
Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
浅草で好きなのは、今も昔も地元の人たちの暮らしがチラリチラリと垣間見えるところだ。他の繁華街にはない、暮らしの臭いがある。最近は、路地で子どもたちが遊んでいる風景が観光客の波に飲まれやしないか、少し心配になってくる。
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
モノクロフィルム復帰後初めて、今回最後の一本をISO800に増感した。
Leica M6TTL Elmar-M 50mm f2.8 Ilford HP5+
Leica M6TTL Elmar-M 50mm f2.8 Ilford HP5+
Leica M6TTL Summaron 35mm f3.5 Ilford HP5+
Leica M6TTL Minolta M-Rokkor 90mm f4 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
それにしても今回改めて実感したのは、外国人の人たちは自撮りであろうと他撮りであろうと、写真に写る時に照れやてらいがないことだ。日本人も若い世代はだいぶ変わってるが、基本的に相撲取り的な無愛想さというか、自分を前に出さない沈黙っぷりを美徳としている部分がある。それはそれで全然悪くないと思うし、外国人が写真に写る時に見せる無邪気さもとても良いと思う。みんな違ってそれでいいのである。
Leica M6TTL Minolta M-Rokkor 90mm f4 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Contax S2 Carl Zeiss Distagon 25mm f2.8 Ilford HP5+
Leica M6TTL Elmar-M 50mm f2.8 Ilford HP5+
Leica M6TTL Minolta M-Rokkor 90mm f4 Ilford HP5+
Leica M6TTL Elmar-M 50mm f2.8 Ilford HP5+