【21st Century Snapshot Man】2016 5/5 伊那・飯田 ぶらり各駅停車ズマロンの旅(前編/伊那)


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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

人間の目の画角に科学的に一番近いのは50mm、感覚的に近いのは35mmと言われる。そして、街頭スナップの基本はやはりレンズ交換なしの1本勝負である(当然ズームレンズは論外)。僕の場合、写真を始めた高校生の時には、最初は50mmしか持っていなかったので普通に50mm一本勝負だったが、当時は50mmで街頭スナップやスクール・スナップを撮っていると狭くてしょうがなかった。写真部の仲間と「50mmは望遠だ!」と悪態をつきながら、当時新宿ヨドバシの地下にあった中古売り場や今もある新宿東口のアルプス堂あたりに行っては、コンタックスのディスタゴン28mmを欲しい欲しいと眺めていた。

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

高2の夏くらいに念願叶ってD28(もちろん中古の2.8J)を手に入れると、中古並品C級ボロボロの初代RTSにつけて、しばらく28mmばっかりで撮っていた。今にして思えば当時はセンスだけが頼りで、確信を持ってフレーミングする技量がなかったから、潔く切り取ることができず「広く広く」となっていたのだと思う。「俺にとっては広角が標準だ」と豪語して「迷い」をごまかしていたのだ。実際、写真経験を重ねて基礎が固まるにしたがい普通に50mmが標準になり、望遠も使えるようになっていった。今では50mmと28mmの2本持ちが一番しっくり来る。余裕がある時にはこれに85mmか90mm、あるいは最近なら100mmマクロの中望遠を加える。前回モノクロフィルム街頭スナップシリーズ【21st Century Snapshot Man】の善光寺編では、18mmも使っているが、慣れればどんな画角でも形にはなる。まがりなりにもプロとして写真を撮っている者なら誰でも、どんな道具でも最低限の仕事はできるし、できなければ話にならない。こういうプライベートな写真とてそれは同じだと思う。

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

とはいえ、人には苦手というものがあって、僕にとってはそれは「35mm」と「ライカ」であった。だから、まさか自分がデジタル時代も深まった今になって、その両方で街頭スナップするとは思ってもみなかった。50mmと28mmから入ったのが要因かは分からないけれど、35mmは自分にとってはちっとも「標準」だとは感じられなかった。中途半端すぎる。「だったら50と28の2本でやるわ」とずっと言ってきた。ライカが苦手だったのは、しっとりと落ち着いた仕上がりを照れていたから。要は貧乏人の意地でしょう。

ともかく、今さら変な意地や照れもないし、レンズの画角に関して苦手感もなにもない境地までまがりなりにも来ているという自覚もあり、思いがけずM6を入手したのを機に、密かに「ライカ中のライカレンズ」と憧れていたズマロンのサンハンを買い足して、45歳にして苦手の「ライカで35mm1本勝負」に繰り出した。それには、「らしい」旅が良かろうと、よく晴れたGWの子供の日に、南信(南信州=長野県南部)のローカル線・飯田線のぶらり各駅停車の旅に出た。蓼科高原にある自宅から車を一時間ほど飛ばして、飯田線最寄りの辰野駅から乗車。まずは伊那市駅で降りた。

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

伊那で途中下車したのにはちゃんとした理由がある。ローメンを食べるためだ。羊肉の汁少なめラーメン(あるいは汁焼きそば)である。僕は、肉の中で羊肉が一番好きだ。臭みを嫌う人が多いが、それこそが「旨味」である。だから、ラムよりもマトンがもっと好きだ。ローメンは日本では珍しくマトンを使う料理なので、羊肉文化が弱い日本にあっては、真正の羊味が味わえる貴重な貴重なB級グルメである。だから、食べ物にうるさいのは下品だというのが僕の持論だが、ローメンだけはリピートしたいとずっと思っていた。前回訪問時が初ローメンだったが、その時と同じ「発祥の店」を今回も訪れた。

ちなみに、前回の伊那訪問は車で。写真もカラーのデジタルである。下はその時の一枚。2015年6月なのでほぼ一年前だが、当然ながら、町の様子は変わっていないが、僕の視点は変わったかもしれない。

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Canon EOS5D Mark3 Carl Zeiss Distagon 28mm F2 ZE

今回食べたローメンの大盛。味はあまりついてない。ソースと酢とおろしニンニクで自分で味付けするからだ。マトンダシだし、そういう面倒で画一的でない食べ物は若い人は苦手だと思う。だから、平成世代や好き嫌いが多いうえに味にうるさいバブル世代周辺にも別にオススメしません。実際、『美味しんぼ』的なセンスでは、決して美味なわけではない。雁屋哲嫌いの僕には、うってつけな食べ物である。

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羊肉で元気になったところで、駅に戻りつつ撮影続行。線路沿いに商店街や飲み屋街、ちょっとしたアーケードがあったりして、なかなか風情がある。でも、地方の町に来るといつも思うが、シャッター街になる前の活気ある姿を見たかった。逆に、日本がまだ元気だった1980〜2000年代頃はもう少し町が寂れているといいのにな、と思ったりしたものだ。そう、適当に町を歩き回って写真を撮る人間なんて勝手なものなのです。そこのところ、自覚して謙虚にやっていきましょう。

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

一年前に上の写真と同じ場所でカラー・デジタルで撮ったのが下の写真。やっぱりモノクロフィルムに回帰した今とはだいぶ意識が違う。こういうことも分かるから、同じ場所に時間を置いて帰ってきたり、定期的に通うことには意味があると思う。

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Sony α7II Contax Carl Zeiss Distagon 18mm F4

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

さて、今回の35mm一本勝負、序盤戦の手応えはというと、35mmだけで撮ってるんだということをそのうち忘れていたというくらい、スッと入ってチャッチャと撮リ続けたという感じだ。一眼レフで覗いた35mmは、今の僕の感覚だと昔と逆で「結構広角だなあ」という感じなのだが、ライカだとちょうどいい。僕のM6は0.85倍ファインダーなので35mm枠は視野のギリギリいっぱい、つまり一眼レフの見え方に近いのだが、それでも一眼とレンジファインダーは感覚が随分違うものである。これなら35mmという万能レンズを苦手感なく使える。

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

モノクロフィルムの街頭スナップを再開して、以前と最も変わったのは、被写体と正対ぎみにスッと淡々と、なおかつ丁寧に撮るようになったことだと思う。奇をてらったり、個性を前面にアピールするような撮り方からは卒業した。いや、そういう若さも自分の中にはずっと残して行きたいが、このモノクロフィルムの街頭スナップはオトナの写真でいきたい。パンフォーカスで静かに空気感を切り取る中に、偶然性やアクシデンタルなものが入ってくれば最高だと思う。写真が絵画と違うところは「事実は小説よりも奇なり」ではないが、自分の意志で撮っているつもりが、客観的な事実や現象が積み上がっていって予想外に面白くなっていく所である。

さらに、現像→プリント(スキャン)という作業を経て、自分で撮った写真なのにそこに初めて見る世界があらためて印画紙やモニターに広がる。作品作りの動機が自己顕示欲だとすれば、写真はあまりにも地味な表現手段だ(もちろん、「これを撮った人はすごいなあ!」と思わせる写真はたくさんあるが・・・)。究極的な写真の楽しみ方って、自分が撮ったとか誰が撮ったかとか全く関係なく、写真そのものを作家や個から独立した世界として見ることじゃなかろうか。その点では、シャッターを押してから出来上がりまでにタイムラグと比較的面倒なプロセスがあるフィルムの方が面白い。根本的な部分はデジタルも同じだとはいえ、自家現像=モノクロにこだわる理由はそんな所にもある。

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

電車の時間が迫ってきたので伊那市駅に戻る。

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

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Leica M6TTL Summaron 35mm F3.5 Ilford HP5 Plus

ローカル線は一本逃すと大変だ。ぶらり街頭スナップは楽しくてきりがなくなるので、ある程度時間で区切りがつくのはかえってありがたい。次の下車駅は飯田。(後編に続く)

   
     
   

by hoq2 | 2016-05-15 23:51 | 写真(Street Snap) | Trackback | Comments(2)

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Commented by korekazu at 2016-05-16 10:22
35mmのレンズを私は持ってないんですよ。
多用するのは28mmで、あとは50mmと80mm、ものによっては望遠ズームも使いますがこれはごく稀です。
35mmも一本くらいは欲しいと思いながら年月だけが過ぎてゆきます。
Commented by hoq2 at 2016-05-17 11:52
> korekazuさん
私と同じですね。28mmは長年一番しっくり来るレンズでした。35mmをしっかり使ったのは、私もこのズマロンが実質初めてかもしれません。つまりこの投稿が処女作。文中に書いている理由に加え、撮影の舞台が「都会」か「田舎」かもあるかも知れません。僕は今田舎に住んでいますが、出身は東京の中心に近い方で、ずっと狭い市街地で街頭スナップしてました。だから、的が近い=広角=28mmが標準になりがちだったんです。それが、30代でベルリンで、40代で長野県で撮るようになって50mmがしっかり標準になりました。50mmが標準というのは、ライカ判と言われた35mm判が誕生したヨーロッパの都市では感覚的にも受け入れられやすいものだったのだと思います。そう考えると、レンズの画角という観点からも東京や大阪といった日本の大都市は密集しすぎなのかもしれませんね。