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モノクロ街頭スナップへの回帰(習作2/横浜・鶴見)

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

前回のこのカテゴリの投稿モノクロ街頭スナップへの回帰(習作1=長野県茅野市湯川) で、往時のカンを取り戻すリハビリ的な撮影をしたのだが、今回はモノクロフィルム写真復帰2度目にして最後の習作である。これからのストリート・スナップでは、10代から30代にかけてモノクロフィルムでやっていた都会の街頭スナップと、40代で蓼科に移住後カラーのデジタル写真で始めたNagano Snapshotの融合を目指す。前者からは通行人を効果的に絡める反射神経を、後者からは人のいない情景から空気感を取り込むセンスを、それぞれ発展的に取り入れて新境地を目指したい。

前回の習作はNagano Snapshot寄りの「田舎」の「晴天」だったが、今回はBerlin + Tokyo寄りの「都会」の「曇天」。TRI-Xを詰めたライカを手に街へ帰って、自分のストリート・スナップがどう変わったか確かめるのが一つ。技術的な面や道具をどうするのか確認するのが二つ目の目的である。撮影場所は横浜の鶴見線沿線。たまたま鶴見小野駅近くで仕事があったので、その帰りに周辺を歩いたのだが、この辺りは好きで昔から何度も来ている。戦後20世紀の京浜工業地帯の雰囲気が色濃いこの地域は、その延長にある品川区で少年時代を過ごした僕にとっては、追憶の街なのだ。

持って行ったのはボディ1台にレンズ2本。M6TTLとキャノンLマウントの50mm1.8・ビオゴン28mm2.8ZM。

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X

写真の精神的な部分はこれ以降の本番撮影で追い追い語っていくとして、まずは使用機材の結論から。フィルム撮影再開を決意した時点では手持ちのニコンとライカで行こうと思っていたのだが、その後、再開を知った大学時代の写真仲間からフィルム現像道具一式をもらい、さらに銀塩をやめた時に売却したコンタックスS2とプラナー50mmを買い戻すという展開があった。その直前に現像セットを自分で買っていたので色々とダブってしまったのだが、それにより道具的には余裕を持ってフィルム撮影が進められることになった。結局、一眼レフは以前と同じコンタックス(レンズはデジタル用にも持っていたのでもともとある程度揃っている)、それにライカを組み合わせていく形に落ち着いた。その他に電池の液漏れで死んでいたミノルタの露出計を再生させたり、ライカ用に新たにズマロン35mmを買い足したりした。

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(モノクロフィルム撮影機材 2016版)

コンタックスS2=時代が変わっても陳腐化しないフルメカニカル機。かつてはRTSがメインでこれはサブ機だったが、修理が難しい今は耐久性が高いS2がベストだろう。マニュアル露出・手動巻き上げで1枚ずつじっくり撮っていく今のスタイルにも合っている

プラナー50mm F1.4 = 高校時代から長年慣れ親しんだレンズ。この個体は製造中止後の最後のデッドストックを新品で入手したもの。
ディスタゴン18mm F4 =デジタル移行後、α7II用に入手したもの。
マクロプラナー100mm F2.8=こちらもα7IIで花を撮影するために使っているものを流用。
ゾナー180mm F2.8=オリンピアゾナー。銀塩時代から愛用していた名玉。この個体はデジタル用に買い直し、最近OHしたもの。

◎ライカM6TTL=ツァイス派の僕はライカをずっと避けてきた。手にしたらハマって高いレンズに散財するのが分かっていたから。しかし、最近アマチュアカメラマンの義理の母にM6をもらったのが、銀塩復帰のきっかけの一つになった。

ツァイス・ビオゴン28mm F2.8=ボディと一緒にもらった。かつて愛用していたコンタックスG用ビオゴンと同等のレンズなので嬉しい。ボディが28mmフレームが出ない0.85タイプなので、28mmファインダーを新たに入手。
ズマロン 35mm F3.5=やはりライカの王道は35mm1本での目測ピントのパンフォーカス撮影。ライカらしいしっとりとした色気のある絵を求めてMマウント初期のズマロンを買い足した。本来はM3用(50mmブライトフレーム対応)だが、M6で35mmフレームが出るようにマウント加工済。
キャノン50mm F1.8(Lマウント)=これも義理の母にもらったもの。記念すべきキャノン初の独自生産レンズだそうだ。ライカにつけて遜色ないシャープな写り。

あとは、コンタックス用にディスタゴン25mm、ライカ用にエルマー50mmがあれば完璧。予算と出物待ち。

それから、どちらもAEがないので、露出計を引っ張りだした。高校時代に友人の父のプロカメラマンにもらったフルメカニカルのセコニック・スタジオデラックスは残念ながら正常に作動せず(当時から怪しかったからくれたのだが)。デジタル式のミノルタ・オートメーターIVは、入れっぱなしの単三電池が見事に液漏れしていて電源が入らなかったが、きれいにクリーニングしたら無事再生。一方、この後、晴天・曇天・夜間・屋内と一通り撮影してみて、案外自分の頭の中の「俺露出計」がまだ正確だった。それでも、ミノルタメーターはお守りとして持っていたい。スマホアプリの露出計よりはずっと心強い。

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X

フィルムは習作2作は基本中の基本ということでTRI-Xを使ったが、高すぎる!その乾いた描写は好みだが、往時に最後に常用していたT-MAXはもっと高いので論外。妥協は良くないが、現実的に無理なく続けられなければ。その折、件の友人から100フィートロールのフィルムローダーを貰ったので、「懐かしいなあ」という思いと共に、まだリーズナブルな価格で100ftロールが入手できるイルフォードのHP5 Plusを常用することにした。TRI-Xと同等の伝統的な高感度フィルムだが、TRI-Xよりもトーンが滑らかでフジの旧400プレストほどは情緒的にはならないというイメージを持っている。汎用パトローネ(昔はヨドバシで使用済みパトローネが「自由に持って行ってください」とダンボールいっぱいに置いてあったが・・・)に巻いたフィルムはイギリスのファッジの空き缶に入れて携行。ISO400のまま常用してNDフィルターと増感現像で調整して使っていく。

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現像タンクも使い慣れたLPLのステンレス(4本タイプ)を貰ったので、同じく貰った自動巻き・回転撹拌タイプのパターソン(2本用)と併用する。現像液は液体タイプを使い捨てるのが楽かと思い、今のところT-MAXデベロッパーを1:7で指定の1:4の1.5倍の現像時間で使っている。でも、やっぱりD-76の1:1が良いのだろうと思う。T-MAX Devを使い切ったら、ID-11(イルフォード版のD-76)の1:1を試したいと思う。

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

フィルムからデジタルへの過渡期には、フィルムスキャナーの時代があった。僕は当時新聞社でカメラマンをしていたので、デジタル化への対応はかなり早かったのだが、フィルムスキャナーが主力の時代が3~4年は続いたと思う。個人の作品撮りでも『Berlin + Tokyo』の写真集と個展もスキャンデータからの印刷とインクジェットプリントであった。会社ではニコンのCoolscan、自宅ではミノルタのDimage Scanを使っていたが、そのDimage Scan Elite5400は捨てずに取ってある(最近も仕事で古い写真の電子化などの際に活用していた)。ただ、現在のIntel Macには対応しておらず、このために取ってあるimac G4を引っ張り出すのが少々難儀であった。それが、今回のフィルム再開にあたり調べてみると、VUE Scanという汎用ドライバーを使えば最新版のMacやPCでも動作することが分かった。Macのパワーが当時と段違いなことも手伝って、スキャン作業は見違えるほど快適になった。

データは基本、Dimage Scan Eliteの能力の半分の2700dpi(A4サイズ)で作成。懐古主義でやっているのではなく「現代のフィルム写真」を追求したいので、粒状感の強調と最新のデジタル写真に見劣りしないシャープネスの両立を目指している。そのあたり、スキャン時の設定やPhotoshopでの最終調整でいくつか独特のことをしている。RGBのモノクロ表現ではなく、完全なグレースケール。「温黒調」「冷黒調」といったトーンの調整はデータ上ではなく、プリントする際にインクジェットプリンターの出力時の調整で行う。プリントする機会はそうはないとは思うが、データはネット上に公開するものなので、見る人それぞれのモニターで最適なトーンを出すのは不可能。特にRGBのモノクロはちょっとした色転びで全く違った見え方になるので、これまでの経験から「トーンはプリントで見せるもの」だという結論に至った。

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X

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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X

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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X
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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X

デジタルとフィルムの違いは色々あるが、習作を2つ撮り終えて新たに気づいたのは、デジタルは個人主義的で内向的であり、フィルム撮影は比較的そうでもないということだ。もちろん、写真撮影は根本的には孤独な行為なのだが、若いころここに掲載しているような写真を撮っていた時には友だちと一緒に街を歩き回って撮ったり、撮影行に行ったりしていた。しかし、デジタル写真でそれをすることは想像できないし、したこともない。自分が変わったという要素を除けば、モニターとにらめっこをしたり、その場で結果が出たりするデジタル写真はどうしても「自己完結型」である。フィルムで撮っていた頃は、シャッターを切ったらその場は終わりだから、仲間と行動を共にしながら撮影する広がりというのか、ゆとりがあったように思う。

それを思うと、人と一緒に撮影行をする楽しみをまた味わってみたいな、とも密かに思っている。出戻りでもフィルム初心者でも良いので、興味があればぜひ。機材や現像用品も予備が揃っているので使ってください(笑)。

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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X

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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X

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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X

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Leica M6TTL Canon 50mm F.18(Lマウント) TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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Leica M6TTL Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM TRI-X

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【使用機材】

   

by hoq2 | 2016-05-09 11:01 | 写真(Street Snap)

(フォトジャーナリスト・内村コースケ)写真と犬を愛するフォトジャーナリストによる写真と犬の話。写真は真実の写し鏡ではなく、写像である。だからこそ面白い。


by hoq2
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