【EOS 5D Mark III】 最終評価・レンズ編(1) Tokina AT-X 16-28mm 2.8 FX PRO
2013年 08月 01日
【EOS レンズ編】
以下の所有レンズについて不定期で評価していきます。基準ボディは当然5DMK3です。
Tokina AT-X 16-28mm 2.8 FX PRO
Canon EF 24-70mm 2.8 L
Canon EF 70-200mm 2.8 L IS Ⅱ
Carl Zeiss Distagon 28mm 2 ZE
Carl Zeiss Planar 50mm 1.4 ZE
Canon EF 85mm 1.8
Sigma 105mm 2.8 DG Macro
Canon EF 300mm 4 L IS
【ボディ編】
5DMK3
5DMK2
同時進行でNEX-7編もやっています。
非純正ですが、EOS用で今一番お気に入りかもしれない。わざわざ純正の16-35mm 2.8L(Ⅰ型)から買い換えたのです。ブランド志向の人からすれば、信じられない買い替えだと思いますが、仕上がりの絵は明らかにトキナーが上です。
僕の仕事上の主力は、2.8のショートズーム3本。報道出身のキャノンユーザーとしてはごく普通です。タムロンやシグマを使う人もいますが、主力には妥協はしないのが普通なので、多くのプロは多少無理してでも3本とも純正Lレンズを選びます。
ところが、キャノンは望遠のAFレンズが素晴らしい反面、広角が弱い。分かってはいたことですが、ボディが5DMK3になってフルサイズで超高画質化した分、これがちょっと我慢の限界を越えてしまいました。長年使った16-35mm 2.8Lは、歪曲収差が大きい。数値的にどうこうというより、その感覚的な気持ち悪さ(歪み方が悪い)に耐えられなくなってしまった。そこで単焦点を含め代替レンズを探してたどり着いたのがこのトキナーだったのです。
16-35には、現行の改良型のⅡ型がありますが、それと比べても描写はトキナーが上でしょう。レンズメーカー製を「純正品の後追い、劣化版」という冷めた見方をする人もいますが、便宜上そういう見方をするならば、本レンズはニコンの名玉AF-S14-24 2.8をお手本にしていると言っていいでしょう。
ATX16-28とAF-S14-24の共通点は、前玉が突出していて固定式フードになっており、フィルターがつかないこと、そしてズーム域を欲張っていないこと。便利さを割りきる反面、歪曲収差補正やシャープネスなど仕上がりの絵の質に徹底的にこだわっている。便利さと画質のバランスが適度に取れた所で落としているEF16-35とは、そもそもの設計思想が違うのです。僕がこのクラスの、さらには5DMK3用の広角ズームに求めるのは画質重視のモデル。キャノンEFマウントではこのトキナーしか選択肢がありません。
25mm相当 F11
21mm相当 F8
最近は住宅の竣工写真を撮る機会が多くなっていますが、歪みをできるだけ抑えたいこのジャンルにも、本レンズは十分に使えます。僕の場合、シフトレンズを使った伝統的な建築写真は、かえって不自然に見えることが多いので志向していません。なので、「広角ズームとしては」極限まで歪みが押さえられた本レンズがちょうどいい。どうしても気になる場合はPhotoshopのレンズ補正でカバーします。後処理をするなら16-35でいいじゃないかということになりそうですが、補正の幅はできるだけ小さい方が良い。歪曲収差に関しては、トキナーの方が圧倒的に上です(周辺光量落ちはキャノンやや優勢)。
17mm相当 F11
20mm相当 F5.6
難点はやはりフィルターがつかないことですが、私はこれをアメリカから取り寄せてPLとGradualND、NDを使えるようにしています(正規の値段は高いですが、ここはしょっちゅう80%offとかの投げ売りをしている)。大きいのでお手軽というわけにはいきませんが、僕はこの3つ以外は物理フィルターは使わないので問題ありません。
26mm相当 / Gradual ND + C-PL 使用
22mm相当 / C-PL 使用
【基本画質 ★★★★★】
シャープネス、色乗り、解像感、歪みの少なさなどあらゆる面で下手な単焦点レンズを上回るのではないでしょうか。個人的には下手などころか、全ての焦点距離でかなりいいお値段がする単焦点よりもいいと思います。2.8Lズームと比べても、16-35mm、24-70mmのワイド端との比較でも本レンズが上回ります(ともにⅠ型との比較だが、Ⅱ型でも同じ結果と予想)。
【色味 ★★★★☆】
EFレンズに準じたシャープで繊細な表現と思います。カラーバランスはイエロー寄り(他社ボディとの組み合わせでは変わるかも)。キャノンのボディがもともとややその傾向があるが、純正レンズとの組み合わせよりももう一段階イエローが強く出ることが多いです。そのクセを把握していれば後処理できれいに合わせられる範囲なので、自分はそれほど気にしません。
【フレア・ゴースト ★★★☆☆】
盛大に出ます。前玉が突出した設計のため、コーティングでよく抑えている部分を割り引いても現代のレンズとしては逆光に弱いレンズと言えます。しっかりハレ切りをすればある程度は防げますが、光源の左右に出る虹色のフレアなど防ぎきれないものもあります。僕は写真は現実のコピーではなく、現実とは異なるレンズを通した世界だと思っているので、こうした"レンズのノイズ”も写真の一部と考えます。なので、かえって個性として歓迎する面もあります。しかし、仕事用の写真となると一般的な意向に沿う部分も必要ですから、正直困る面の方が強いかもしれません。まあ、個人的には★3つ、一般論では★2つというところです。個性としてうまく付き合えれば勝ちですね。
【AF ★★★☆☆】
16-35 2.8Lと比べれば遅いですが、広角ズームとしては十分に速く、静か。動体撮影にも十分対応可能です。問題は、フルタイムマニュアルではないこと。ピントリングを前後にカチカチと動かすことでAF/MFの切り替えをします。シームレスにAF/MFを使い分けている自分には特に、これはいただけない。ただ、切り替え方式のレンズとしては使いやすいほうだと思います。
【ピントリング・ズーミング ★★★☆☆】
ピントリングはキャノン用はキャノン回り、ニコン用はニコン回りに合わせられているのでいいのですが、ズームリングはニコン回り(キャノンと逆)のまま。これは使いづらい!いっそピントもズームも逆の方がましです。トルクはともに重め。自分にとってはピントリングはちょうどいいが、ズームリングは重すぎる。とはいえ、トータルな使用感はMFレンズっぽくしっかりしていて非常にいいと思います。
【デザイン・造り ★★★★★】
ニコン寄りのデザインですが、僕は好きです。高級ではないが、チープでもない、剛性感のある西ドイツっぽさも感じます。個人的にはとても好きな感じ。とにかく、造りはしっかりしていると思います。
【コストパフォーマンス ★★★★★】
かなり使い込んだ16-35を売ったお金で新品を買ってお釣りが来ました。それで仕上がりの満足度はこちらが上なのですから、純正との比較では満点でしょう。
【総合評価 ★★★★★】
個別評価では大きなものも含めいくつか欠点があります。にもかかわらず満点なのは、それらの欠点が長所と表裏一体だから。フィルターがつかなかったりフレアが出やすかったりするのは画質追求の副産物だし、フルタイムMFではないのは純正の半額以下なので仕方ないです。長所が飛び抜けていいだけに、個人的評価として満点です。
ちなみに、16-28というズーム域は僕にとっては16-35よりも歓迎なのです。ボディ2台持ち、ショートズーム3本のトータルで考えるからです。つまり、16-28、24-70、70-200ときれいにつながるこちらのほうが、24-70とかなりの部分が被る16-35より使いやすいと言えるのです。
※上のリンクのWonder Panaはニコン14-24用です。